自宅の住所とか事務所の所在地について、「住民票に書いてある住所」と「権利証(登記簿)に書いてある住所」の表記が違っていて、戸惑ったことはありませんか?
例えば、
・住民票: 「〇〇町 10番1号」
・登記簿: 「〇〇町 10番地1」
→「番」と「号」?
→「番地」?
なぜ、2種類の住所が存在するのでしょうか。
これは、許認可申請や相続手続きにおいて、非常に重要なポイントです。
この違いを理解していないと、申請書が受理されなかったり、手続きがやり直しになったりするケースもあります。
今回は、この「地番」と「住居表示」という2つの住所について、それぞれの役割と根拠を詳しく解説します。
1 住居表示(じゅうきょひょうじ)とは
まず、私たちが普段「住所」として、手紙や宅配便で使っているのが「住居表示」です。
⑴ 目的と役割
・住居表示の最大の目的は、「日常生活の利便性・安全性の確保」です。
・具体的には、郵便物や宅配便をスムーズに届けたり、救急車や消防車、パトカーなどが迷わずに迅速に目的地へ到着できるようにするために整備されました。
・「建物を見つけやすくするための住所」と考えると分かりやすいでしょう。
⑵ 根拠法令
・根拠となる法律は「住居表示に関する法律」(昭和37年)です。
・この法律に基づき、主に都市部などの市街地で、市区町村が「住居表示実施区域」を定めて実施しています。
⑶ 表記の特徴
表記方法は、道路などで区切られた「街区(ブロック)」と、その中の「建物」の番号で構成されます。
① 表記例: 岩手県北上市〇〇一丁目 2番 3号
「番」 = 街区符号(ブロックの番号)
「号」 = 住居番号(建物の番号)
② どこで使われるか
・住民票 ・印鑑証明書 ・運転免許証 ・健康保険証 ・郵便物や宅配便の宛先
・カーナビゲーション
2 地番(ちばん)とは
一方、「地番」は、住居表示とはまったく異なる目的で使われる番号です。
⑴ 目的と役割
・地番の最大の目的は、「財産の管理」です。
・これは「建物」ではなく、その下の「土地」を特定するために付けられた管理番号です。
法務局が、日本全国の土地を一筆(いっぴつ=登記上の1区画)ごとに管理し、「この土地の所有者は誰か」「担保(抵当権)は付いているか」といった権利関係を明確にするために使います。
・「土地のID番号」と考えると良いでしょう。
⑵ 根拠法令
根拠となる法律は「不動産登記法」(旧法は明治32年。全部改正は平成16年)です。
この法律に基づき、法務局(登記所)が、土地に番号を付けて管理しています。
① 表記の特徴
土地の場所を指すため、「〇〇番地」や「〇〇番1」のように表記されます。
② 表記例: 岩手県北上市〇〇町 10番地1 (または 10番1)
③ どこで使われるか
・登記事項証明書(登記簿謄本)
・固定資産税の納税通知書
・公図(地図)
・不動産の売買契約書
★本籍
原則として、本籍は「地番」で表示
↓
ただし、住居表示が実施された区域は、「例外的」に住居表示で表示することも認めています。
(戸籍法施行規則 第3条)
3 使い分けが重要
・この2つは目的も根拠法も異なるため、「住居表示が実施されている地域」では、地番と住居表示の番号は一致しません。
・これが、住民票と登記簿の住所表記が異なる理由です。
(例)「北上市〇〇町10番地1」の土地の上に、
↓
「北上市〇〇一丁目2番3号」の家が建っている
ということが、都市部ではごく普通に起こります。
(注)北上市内でも、住居表示が実施されていない農村部は、今でも「地番」をそのまま「住所」として使っている場所が多くあります。
・許認可申請(建設業許可や医療法人設立など)や相続手続きなどは、この「地番」と「住居表示」の使い分けは極めて重要です。
⑴ 建設業許可申請
・申請書の「営業所の所在地」欄には、郵便物が届く「住居表示」を記載します。
・しかし、その営業所が自己所有の建物である場合、添付する「登記簿」は「地番」で取得します。
・この2つが違っていても、同一の場所であることを説明できなければなりません。
⑵ 医療法人設立
・法務局に登記する「主たる事務所の所在地」は、登記簿の表記(地番または住居表示)と一致させる必要があります。
・しかし、保健所に申請する際は、実際に機能する場所(住居表示)を求められます。
⑶ 相続手続き
・亡くなった方(被相続人)の「住民票の除票」に記載されているのは、住居表示です。
・しかし、相続財産である土地を特定するために法務局で調査するのは「地番」です。
・「住居表示」から「地番」を特定する(またはその逆)作業は、仕業(行政書士、司法書士)専門家でなければ難しい場合があります。
4 まとめ
・「地番」と「住居表示」は、似ているようで全くの別物です。
〇住居表示 = 建物用 →郵便や救急車のため(住民票の住所)
〇地番 = 土地用 →財産管理や課税のため(登記簿の住所)
・これらの使い分けを誤ると、申請書が差し戻されたり、最悪の場合、大切な財産(土地)の特定が漏れてしまったりする危険性もあります。
「自分の事務所の地番が分からない」「この申請書、どっちの住所で書けばいいの?」
こうした複雑な住所の確認や公的書類の作成は、専門家である行政書士にお任せください。
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