建設業の育成就労

「技能実習制度が、もうすぐ廃止されるって本当?」
「新しく始まる『育成就労』って、一体何が違うの?」
「これからの外国人雇用で、会社として何を準備すれば良いのだろう?」
こんな、目前に迫る大きな制度変更に、不安や疑問を感じていませんか?

ご安心ください。
その不安は、新しい「育成就労」制度の目的と、技能実習との決定的な違いを正しく理解することで、未来への確かな「備え」へと変わります。

この記事では、建設業界の外国人雇用を根底から変える「育成就労」制度について、その核心的な変更点と、受入企業に求められる対応を分かりやすく解説します。

深刻な人手不足に直面する日本、そして建設業界。
これまで、外国人材の受け入れは「技能実習」という制度が大きな役割を担ってきました。

しかし、制度の趣旨と実態の乖離や、人権上の課題などが指摘される中、ついに、この技能実習制度は廃止され、全く新しい制度へと生まれ変わることが決定しました。
2024年(令和6年)6月に改正出入国管理法が成立し、2027年(令和9年)までに、新しい在留資格「育成就労」がスタートします。これは、単なる名称変更ではありません。

日本の外国人材受け入れ政策の、歴史的な大転換です。
今回は、この「育成就労」制度について、建設業者の皆様が「今」知っておくべき重要なポイントを詳しく見ていきましょう。

1「育成就労」制度とは?

まず、育成就労制度が、これまでの技能実習制度と、その理念において、どのように根本的に異なるのかを理解することが重要です。

1-1. 目的の転換

技能実習制度は、建前上「日本で培った技能を母国へ持ち帰り、その国の発展に貢献してもらう」という国際貢献を目的としていました。

一方、新しい育成就労制度は、日本の深刻な人手不足に対応するため、「日本国内で3年間かけて、一定の専門性・技能を持つ人材を育成し、将来的に特定技能1号へ移行してもらうことで、我が国の労働力として確保する」ことを、明確な目的としています。

これは、日本が本格的に、外国人材を「労働力」として正面から受け入れ、育成していくという、国の方針転換を意味します。

1-2. 最大の変更点

この理念の転換を象徴するのが、「転籍(転職)」の扱いです。
技能実習では、原則として3年間、同じ実習実施者(企業)で働き続けることが求められ、転職の自由はほとんどありませんでした。

育成就労では、外国人労働者の人権保護と、より良い労働環境への動機付けの観点から、一定の条件下で、本人の意向による転籍が認められるようになります。

① 転籍が可能となる条件(予定):
② 同一企業での就労期間が1年以上2年以下であること。
③ 技能検定(初級レベル)と、一定水準の日本語能力試験に合格していること。
④ 転籍先も、同一の業務区分内であること。

この「転籍の自由化」は、受入企業にとって、「選ばれる」ための努力がこれまで以上に求められるようになることを意味し、今回の制度変更における最大のポイントと言えるでしょう。

2「育成就労」の在留資格について

育成就労の在留資格を得るためには、外国人本人にも、就労開始前の段階で一定の要件が課せられます。

2-1. 求められる日本語能力

就労開始前に、日本語能力A1相当以上(例:日本語能力試験N5程度)の試験に合格していること、または、認定日本語教育機関等で所定の講習を受講していることが求められます。
これにより、来日直後からの円滑なコミュニケーションを目指します。

なお、技能実習とは異なり、入国前の技能レベルは問われません。
あくまで日本国内で3年間かけて育成していく、という考え方が基本です。

2-2. 3年後のキャリアパス

育成就労の在留期間は3年間です。この期間内に、「特定技能1号」の水準の技能・日本語能力を習得することが目標となります。
3年間の就労を無事に終え、特定技能1号の試験に合格すれば、そこからさらに通算5年間、日本で働く道が拓けます。

3受入企業(育成就労実施者)に求められること

外国人材を受け入れる企業は、「育成就労実施者」として、これまで以上に計画的な育成と、手厚いサポート体制が求められます。

3-1. 「育成就労計画」の作成と認定

受け入れる外国人ごとに、育成の目標や内容、期間などを定めた「育成就労計画」を作成し、新たに設立される監督機関「外国人育成就労機構」の認定を受ける必要があります。

3-2. 建設分野で求められる独自の基準

特定技能制度と同様に、建設分野においては、業界横断の基準に加え、国土交通省が定める独自の受入基準が設けられる予定です。

具体的には、以下のような要件が課されることが予想されます。
① 建設業許可を取得していること。
② 建設キャリアアップシステム(CCUS)へ登録していること。
③ 建設技能人材機構(JAC)等、分野別の協議会へ加入すること。
④ 日本人と同等額以上の、適正な報酬を支払うこと。
⑤ 外国人が理解できる言語で、事前に重要事項を説明すること。

4整理

技能実習制度から育成就労制度への移行は、建設業界の外国人雇用における、まさに「ゲームチェンジ」です。
これまでの、「一度受け入れたら3年間は自社で働いてくれる」という考え方は、もはや通用しません。

これからの時代に求められるのは、外国人材を単なる「労働力」としてではなく、自社の未来を担う「人財」として正面から向き合い、適切な育成計画と、公正な労働環境を提供し、彼らから「この会社で働き続けたい」と選ばれる企業になることです。

制度の完全移行まで、残された時間は長くありません。
この大きな変化の波に乗り遅れないためにも、今から、自社の受け入れ体制や労働環境を見直し、新しい時代への準備を始めてみてはいかがでしょうか。

5まとめ

2027年までに、現行の技能実習制度は廃止され、新たに「育成就労」制度が始まります。
この新制度の最大のポイントは、「転籍の自由化」です。
これは、受入企業にとって、外国人材を育成し、定着させるための、より一層の努力が求められる時代の到来を意味します。

「新しい制度に対応するために、自社の就業規則や雇用契約書を見直したい」「受入計画の認定など、複雑な手続きが不安だ」といったお悩みは、専門家である行政書士にご相談ください。

当事務所は、建設業法務に加え、入国管理に関する手続きもサポートしております。
元岩手県職員としての経験と他士業との連携を活かし、新しい時代に対応する、貴社の適法で円滑な外国人雇用を、力強く支援いたします。

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