
「ある日突然、国土交通省から『下請取引等実態調査』という書類が届いた…」
「これは一体何の調査で、回答しないとどうなるの?」
「この調査の結果が、立入検査や監督処分に繋がるって本当?」
こんな疑問や不安を感じていませんか?
ご安心ください。
その不安は、この調査の目的と内容、そして、その先に待つものを正しく理解することで、確かな「備え」へと変わります。
この記事では、すべての建設業者が知っておくべき「下請取引等実態調査」について、その内容から回答義務、そして企業が取るべき対策までを分かりやすく解説します。
建設業界の健全な発展のためには、元請負人と下請負人との間の公正で透明な取引関係が不可欠です。
この理想を実現するため、国土交通省と中小企業庁は、毎年、建設業者の皆様を対象とした大規模なアンケート調査、「下請取引等実態調査」を実施しています。
これは、単なる統計調査ではありません。
むしろ、業界の取引実態を把握し、法令違反の疑いがある行為に「メス」を入れるための、行政による「業界の健康診断」とも言える、非常に重要な調査です。
今回は、いつ自社に届いてもおかしくない、この実態調査について詳しく見ていきましょう。
1「下請取引等実態調査」とは何か?
まず、この調査がどのような目的で、どのように行われているのか、その全体像を理解することが第一歩です。
1-1. 調査の目的
この調査の最大の目的は、建設工事における元請・下請間の取引の実態を把握し、建設業法に照らして不適正な取引(不当に低い請負代金、一方的な値引き、支払遅延など)が見受けられる建設業者に対し、指導・助言を行うことで、取引の適正化を促すことにあります。
この調査の最前線に立つのが、あの「建設Gメン」です。
彼らは、この調査結果を、業界の課題を分析し、次の指導・監督方針を決めるための重要な基礎資料として活用しています。
1-2. 調査の対象と方法
調査は、全国の建設業者の中から、無作為に抽出された事業者を対象に行われます。
近年、調査はオンラインでのWeb回答方式に移行し、その対象者数は大幅に増加しています。
例えば、令和6年度の調査では、全国で約3万の事業者が対象となりました。
これは、もはや「大手企業だけの話」ではなく、すべての建設業者にとって、いつ調査票が届いてもおかしくない状況であることを意味しています。
2一体何を調査されるのか?
調査票では、建設業界の「今」を反映した、非常に具体的で、時に耳の痛い質問が並びます。
近年の調査で、特に重点的にチェックされているのは、以下のような項目です。
2-1. ①見積もり・契約に関する項目
⑴ 適正な工期や労務費を反映した見積もりが行われているか。
⑵ 下請負人に対し、法定福利費を内訳明示した「標準見積書」の活用を働きかけているか。
⑶ 予期せぬ物価の変動に対応するための契約変更(スライド)条項が、契約書に適切に盛り込まれているか。
2-2. ②下請代金の支払いに関する項目
⑴ 下請代金の支払いが、法律で定められた期日内に行われているか。
⑵ 支払いが、長期の手形ではなく、できる限り現金で行われているか。
⑶ 合理的な理由なく、一方的な指値(さしね)発注や、代金の減額を行っていないか。
2-3. ③技能労働者の処遇に関する項目
⑴ 建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用状況。
⑵ 技能労働者への、適切な水準での賃金支払いが確保されているか。
3調査結果がもたらす「その後」
この調査は、回答して終わり、ではありません。
その回答内容によっては、具体的な行政のアクションに繋がる可能性があります。
3-1. 「指導票」の送付
調査の回答内容から、建設業法に違反する「不適正な取引」を行っている疑いがあると判断された事業者には、国土交通省から「指導票」が送付されます。
これは、問題点を指摘し、自主的な改善を促すための、いわば「イエローカード」です。
その割合は、決して低いものではありません。
例えば、令和5年度の調査では、下請工事を発注した元請業者のうち、実に9割以上の事業者に、何らかの指導票が送付されています。
3-2. 「立入検査」への発展
指導票を送付しても改善が見られない、あるいは違反行為が悪質であると判断された場合には、さらに強制力のある「立入検査」の対象となる可能性があります。
3-3. 回答は「義務」であり、罰則も
「面倒だから」と、この調査への回答を無視したり、あるいは、実態と異なる虚偽の回答をしたりすることは、絶対にやめてください。
この調査は、建設業法に基づく報告徴収の権限によって行われており、報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした者には、100万円以下の罰金という、重い罰則が定められています(建設業法第52条)。
なお、行政庁は、回答した事業者が特定できないよう、情報の取り扱いには万全を期していますので、下請負人の皆様も、安心して実態を回答することが可能です。
4整理
「下請取引等実態調査」は、行政が、今、建設業界のどこに問題意識を持っているのかを、如実に示すものです。
調査票に並ぶ質問項目の一つひとつが、あなたの会社が、そして建設業界全体が、今まさに遵守すべき、重要なコンプライアンス項目なのです。
この調査票が届いた時、それは、自社の取引慣行や契約内容、そして下請負人とのパートナーシップのあり方を、客観的に見つめ直す絶好の機会です。
日頃から、法令を遵守した誠実な企業経営を心掛けることこそが、この調査に対する、そして企業の未来を守るための、最善の「回答」と言えるでしょう。
5まとめ
国土交通省と中小企業庁が実施する「下請取引等実態調査」は、すべての建設業者にとって、自社のコンプライアンス体制を問われる重要な機会です。
その回答は法律上の義務であり、内容によっては、行政指導や、さらには立入検査に繋がる可能性もあります。
「調査票の質問の意図が、よく分からない」「自社の取引慣行が、法的に問題ないか、客観的にチェックしてほしい」など、ご不安な点は、専門家である行政書士にご相談ください。
当事務所は、元岩手県職員としての経験と他士業との連携を活かし、行政の視点を踏まえた、実践的なコンプライアンス体制の構築をサポートします。
貴社を法務リスクから守り、健全な事業運営を力強く支援いたします。
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