建設業許可申請においては、定款の写しへの「原本証明の押印」は不要(廃止)となりました。
近年の規制改革(押印廃止)の流れにより、ここも簡素化されています。
ただし、「業務ごとのバラツキ」と、「リスク管理」の観点から、いくつか注意すべきポイントがあります。
今回、実務家目線で整理しました。
1 建設業許可(岩手県)の現在のルール
現在、各県の建設業許可手引き、および国交省のガイドラインでは、以下のように「運用」されています。
⑴ 原則:
定款の写しを含め、添付書類への「原本証明印(会社の代表印)」は不要。
⑵ 記載方法:
・定款のコピーの末尾に、以下のような文言の記載(ゴム印やパソコン印字)があれば、その横の「㊞」はなくてOK。
・「この写しは、現行の定款に相違ありません。 令和〇年〇月〇日 株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 〇〇」 (※ハンコはいりません)
2 「ハンコなし」の注意点(他業務での罠)
ここが重要です。
「建設業は不要」ですが、「全ての許認可で不要」とは言い切れません。
他分野では注意が必要です。
⑴ 建設業・産廃など:
国(国交省・環境省)主導で、強力に押印廃止が進んだため、不要です。
⑵ 医療法人・農地転用・入札参加資格など:
所管庁や自治体の判断がバラバラです。
特に、古い体質の残る手続きや、権利関係に直結する手続きでは、「念のため原本証明に実印をください」と言われるケースが、まだ残っています。
3 実質的な対応
★ あえて「捨印」や「原本証明印」を押す!
「これが最新の定款である」という、自分の意思を役所に対して示す。
(実務上、あえて押印をする)
役所は、ハンコ付きで出しても、拒否はされません。
万が一、記載ミスがあった時のために、申請書の欄外等に「捨印」をもらうのと、同様の感覚です。
<参考>
〇 許認可の手引きに、「原本証明の押印は不要」と書かれていない!
法的根拠は、「不要である旨の通知」があるわけではなく、「押印を求める根拠(条文上の規定)が削除されたから、法的根拠がなくなって不要になった」という「削除形式」で成立しています。
⑴ 根拠となる「省令」
・すべての発端は、以下の省令改正です。
・根拠法令:
「押印を求める手続の見直し等のための国土交通省関係省令の一部を改正する省令」(令和2年12月23日 国土交通省令第98号)→令和3年1月1日施行
・この省令により、建設業法施行規則にある全ての様式(第1号様式など)から「印」というマークが削除されました。
⑵ なぜ「定款の原本証明」も不要になるのか?
・申請書のハンコが消えたのは分かるが、添付書類(定款など)の原本証明印が不要だ、とはどこに書いてあるのか?という点です。
・これは、国交省の「パブリックコメント回答」や、改正当時の「Q&A」による「解釈」が根拠になっています。
・申請書の性質:
建設業許可申請書(第一号様式)は、「私(申請者)は、この申請書と添付書類の内容に嘘がないことを誓います」という意思表示の書類です。
↓
① 改正前:
申請書に実印を押すことで、添付書類(定款の写し等)の正当性も担保していました。
念のため、定款そのものにも「原本証明印」を押していました。
② 改正後:
省令改正により、「申請者の氏名の記載」のみで、意思表示として有効(ハンコ不要)とされました。
③ 結論:一番上にある「申請書」において、「氏名記載だけでOK(真正性を担保できる)」とされた以上、添付書類だけ別途「ハンコで証明しろ」というのは法的整合性が取れない!
よって、申請書への氏名記載をもって、添付書類の「真正性」も同時に担保される、という解釈になりました。
⑶ 明確な「証拠」はあるのか?
① 国交省の「建設業許可事務ガイドライン」の改正(令和3年1月1日施行)
・ガイドライン本文ではなく、「新旧対照表」を見ると明らかです。
・以前、様式等の説明に存在した「押印」に関する記述が、すべてと削除されています。
・「書かれていない」ことこそが、「求められていない」ことの証明となります。
→ 行政手続法において、法的根拠のない義務を課すことはできないため。
② 国交省 建設業課の「よくある質問(Q&A)」等の実務対応
改正当時(令和3年)、各都道府県の土木事務所向けに、実質的に以下のような運用指針が示されています。
Q: 添付書類(定款の写し等)への原本証明は必要か?
A: 申請書への押印が廃止された趣旨に鑑み、原則として不要として取り扱うこと。
ただし、委任状など、私人間契約の性質を持つものや、他法令で求められるものは除く。
③ 行政のルール(行政手続法)
・手引きに『〇〇すること』と書いていない以上、それを理由に補正(やり直し)を命じることはできない、という原則があります。
・「原本証明してください」という記載がなくなったことが、すなわち「不要であることの根拠」となります。
⑷ 結論
・「原本証明は不要である」と明記された通知は、存在しません。
(役所は「不要」とは書かず、「必要という規定を消す」ことで対応)
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