補助金の代理

実務現場で最も「グレーゾーン」となりやすいテーマです。
結論から申し上げますと、
・ 事業計画書の作成(コンサルティング)は、だれでも自由にできる。
・ 「申請書の作成」および「代理申請(提出)」は、行政書士(および弁護士)の独占業務。

しかし、実際の補助金実務では、「認定支援機関(他士業、銀行など)」や「民間コンサルタント」が入り乱れており、どこで線を引くべきか、法的な整理と実態について解説します。

1 なぜ、他士業などもやっているように見えるのか?

ここには2つの大きな要因があります。

⑴  「認定経営革新等支援機関」という特別枠


ものづくり補助金や事業再構築補助金では、「認定支援機関(他士業、銀行など)の確認書」が必要です。
これにより、他士業等は「計画の実効性を確認する」という立場で関与します。

① 適法なライン: 他士業等が「事業計画の財務部分をアドバイスし、確認書を発行する」こと。
② 違法なライン: 他士業等が「申請書(様式第1号など)そのものを代わりに作成し、電子申請の入力代行までする」こと。

⑵ 電子申請(jグランツ)による「本人申請の建前」


これが、現在の最大の問題点です。

① 実態:
一般コンサル会社が、書類一式(WordやPDF)を作り、申請者(事業者)に渡して、「あとは事業者のアカウントで、ここに入力して送信ボタンを押してください」と指示する。

② 法の抜け穴:
・「作成」とは:
コンサルが作ったのはあくまで「下書き」であり、清書・入力したのは社長本人だ、という理屈。
・「提出」について:
送信ボタン(=法的効果の発生)を押したのは社長のIDなので、形式上は「本人申請」となり、代理申請ではない。

※ただし、コンサルが「社長のGビズIDとパスワードを預かって、勝手にログインして送信する」行為は、GビズIDの規約違反であるとともに、実質的な代理申請として行政書士法違反となります。

2 行政書士の強み

⑴ 「適法に」代理申請ができる(代理人名の入力)

電子申請システムには「担当者(または代理人)」の入力欄があります。
ここに「行政書士 〇〇」と記載し、行政書士として代理送信できるのが、行政書士の最大の強みです。無資格コンサルは、ここに自分の名前を書けません。書くと違法証拠になります。

⑵ 採択「後」のフォロー(交付申請・実績報告)

補助金は、採択(合格)された後が、本番です。
見積書の整理、発注、納品、支払いの証拠書類(振込控)を揃えて提出する「実績報告書」の作成こそ、まさに「事実証明に関する書類作成」であり、行政書士の独占業務そのものです。
一般のコンサルタントは、計画を書くのは得意ですが、この事務処理(実績報告)は得意としていないところが大半です。
一番重要なこの作業を全体的に、トータルサポートできるのが行政書士の役割です。

行政書士が、補助金業務ができるのは、計画書を作るだけでなく、面倒な役所への申請手続き、そして採択後の「実績報告(お金をもらう手続き)」まで、法律上の代理人として、堂々と行えるのは行政書士だけであり、コンサルタントや他士業との明確な違いとなっています。

3 令和8年(2026年)1月1日から、改正行政書士法が施行されます

令和6年(2024年)5月に公布された改正行政書士法(施行:2026年1月1日)により、補助金についてコンサルタント業者や他士業の方が代理をすると、罰則などで厳しい対応となります。

特に、これまでグレーゾーンと言い逃れされてきた「相談業務(コンサルティング)」や「草案(ドラフト)の作成」が、明確に行政書士の独占業務として、法的に位置づけられました。

また事業者は、単に「法律違反」と言うだけでなく、「経営リスク(コンプライアンス)」という観点から、他人事でなくなります。

⑴ 「コンプライアンス(法令遵守)」の観点

今や中小企業であっても、取引先や銀行からコンプライアンスを厳しく見られ、「違法業者を使っている」こと自体が、会社の信用失墜につながります。

<事業者のデメリット>
・無資格者への発注は、「反社会的勢力との取引」と同様に、信用失墜となります。
・これまでは「書類作成のアドバイス」という名目で無資格コンサルが入っていた場合、それ自体が罰則の対象になる。
・違法な業者に、会社の機密情報やID(GビズID)を渡していた場合、その事業者自身の責任(善管注意義務違反)が問われる。
・銀行や取引先から、信用を失う。

⑵ 「契約の無効・返金トラブル」の観点

過去の判例(最高裁など)では、行政書士法違反の契約(無資格者が報酬を得て書類作成をする契約)は、「公序良俗に反し無効(民法90条)」とされた事例があります。
よって、着手金や成功報酬を払ったとしても、そもそも契約が「無効」なので、トラブルになっても守ってもらえない(むしろ金銭トラブルになる)ことになります。
また、補助金が不採択だったり、申請ミスで損害が出たりしても、そもそも違法行為に対する契約なので、損害賠償請求が不可能となります。

⑶ 「申請自体の取り消しリスク」の観点

補助金事務局や役所は、不正申請に非常に神経質になっています。
無資格者が作成に関与したことが発覚した場合、申請自体が却下されるリスクがあります。
よって、「名義貸し」や「なりすまし申請」は、発覚すれば補助金返還や社名公表のペナルティとなる場合もあります。
最悪、数年間にわたり補助金の申請できなくなる「ブラックリスト」に掲載される危険も十分にります。

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