建設工事紛争審査会とは?

「工事代金を支払ってもらえない…」
「追加工事の費用で、発注者と揉めている」
「裁判は、時間も費用もかかりすぎる…」
建設工事の請負契約をめぐる、深刻な紛争にお悩みではありませんか?

ご安心ください。
その悩みは、裁判以外の紛争解決手段である「建設工事紛争審査会」を活用することで、より迅速で、専門的な解決が図れるかもしれません。

この記事では、建設業法に基づいて設置された、建設工事に特化した紛争解決機関「建設工事紛争審査会」の3つの手続きと、その活用方法について分かりやすく解説します。

どれだけ誠実に仕事に取り組んでいても、残念ながら、建設工事の請負契約において、当事者間のトラブルは起こり得ます。
工事の欠陥(瑕疵)をめぐる争い、追加変更工事の代金未払い、工期の遅延…。

一度こじれてしまった紛争は、時に、時間も費用もかかる、厳しい法廷闘争へと発展します。
しかし、その前に、ぜひ知っておいていただきたいのが、裁判によらない紛争解決(ADR)の専門機関、「建設工事紛争審査会」の存在です。
今回は、この建設業界の「駆け込み寺」とも言える、紛争審査会の役割と活用法について詳しく見ていきましょう。

1建設工事紛争審査会とは?

まず、紛争審査会がどのような組織なのか、その概要を理解することが第一歩です。

1-1. 審査会の目的と構成

建設工事紛争審査会とは、建設業法に基づき、国土交通省(中央審査会)と各都道府県(都道府県審査会)に設置されている公的な第三者機関です。
その最大の目的は、建設工事の請負契約に関する紛争を、「簡易、迅速、かつ妥当な費用」で解決することです。

審査会の委員は、法律の専門家である弁護士だけでなく、建築や土木の専門家も含まれており、技術的な論点が絡む建設紛争を、専門的な知見に基づいて審理できるのが大きな特徴です。

1-2. どの審査会に申請するのか?(管轄)

紛争の当事者である建設業者の許可の種類によって、申請すべき審査会が異なります。
⑴ 中央建設工事紛争審査会:
当事者の少なくとも一方が、国土交通大臣の許可業者である場合など。
⑵ 都道府県建設工事紛争審査会:
当事者が、その都道府県知事の許可業者である場合や、許可を持たない者同士の紛争で、工事現場がその都道府県内にある場合など。

2紛争解決のための3つの手続き

紛争審査会では、紛争の性質や、当事者が望む解決の形に応じて、以下の3つの手続きを選ぶことができます。

2-1. ①あっせん

「あっせん」は、当事者間の話し合いを、中立的なあっせん委員が仲立ちすることで、円満な解決を目指す手続きです。
技術的・法律的な争点が少なく、当事者間の感情的な対立が主な原因であるような場合に適しています。

2-2. ②調停

「調停」は、弁護士や建築の専門家などで構成される調停委員会が、双方の主張を詳しく聞き取った上で、専門的な知見に基づいた具体的な「調停案」を示し、和解を促す手続きです。
技術的な欠陥の有無や、契約解釈が争点となる、より複雑な紛争に適しています。

2-3. ③仲裁(最終判断)

「仲裁」は、裁判に代わる、非常に強力な紛争解決手続きです。
仲裁委員会が、双方の主張と証拠に基づいて下す「仲裁判断」は、裁判所の確定判決と同一の効力を持ち、当事者はその判断に法的に拘束されます。

原則として、その内容に不服を申し立てることはできず、一審制で紛争を最終的に解決できるのが大きな特徴です。

ただし、この強力な仲裁手続きを利用するためには、あらかじめ当事者間で「紛争が生じた場合は、裁判ではなく、審査会の仲裁によって解決する」という書面による合意(仲裁合意)が必要です。

3.審査会が取り扱う紛争の範囲

審査会が取り扱うのは、あくまで「建設工事の請負契約に関する紛争」に限られます。

3-1. 対象となる紛争の例

・ 工事の瑕疵(欠陥)をめぐる紛争
・ 請負代金の未払い、追加変更工事代金をめぐる紛争
・ 工期の遅延に伴う損害賠償をめぐる紛争 など

3-2. 対象とならない紛争の例

・ 不動産の売買契約に関するトラブル
・ 設計・監理業務の委託契約に関するトラブル
・ 元請負人と労働者との間の雇用契約に関するトラブル など

また、審査会は、直接の契約当事者間の紛争を対象としています。
例えば、発注者と二次下請負人との間など、直接の契約関係がない当事者間の紛争は、原則として取り扱うことができません。

4審査会を利用するための手続き

審査会を利用するには、申請人が、定められた申請書と添付書類、そして申請手数料を、管轄の審査会事務局に提出する必要があります。

4-1. 必要な書類

申請書に加え、契約書の写し、設計図書、工事写真、当事者間のやり取りを示す書類(メールや議事録など)といった、紛争の事実関係を証明するための証拠書類を、整理して提出することが、その後の手続きを円滑に進める上で非常に重要です。

4-2. 申請手数料

手数料は、請求する金額(紛争の目的の価額)に応じて定められており、裁判に比べて低廉な費用で手続きを開始できるのが大きなメリットです。

5整理

建設工事をめぐる紛争は、放置すればするほど深刻化し、当事者の時間、費用、そして精神的な負担を増大させます。
裁判という最終手段に至る前に、建設分野の専門家が、中立的な立場で、迅速かつ妥当な解決を目指してくれる「建設工事紛争審査会」という選択肢があることを、ぜひ覚えておいてください。

そして、この審査会を有効に活用するためには、自社の主張を法的に、かつ技術的に裏付けるための、客観的な証拠書類を、いかに的確に準備・提出できるかが、その成否を分ける鍵となります。
紛争という困難な局面に直面した時こそ、冷静に、そして戦略的に対応するために、ぜひ専門家のアドバイスをご活用ください。

6まとめ

建設工事の請負契約をめぐる紛争は、企業の経営を揺るがしかねない重大なリスクです。
裁判という選択肢の前に、建設業法が用意した専門的な紛争解決機関「建設工事紛争審査会」の活用を検討する価値は、非常に大きいと言えるでしょう。

「このトラブルは、審査会で解決できるだろうか」「申請に必要な書類の準備や、主張の整理を、専門家の視点から手伝ってほしい」など、紛争解決に関するお悩みは、ぜひ当事務所にご相談ください。

当事務所は、元岩手県職員としての経験と、弁護士など他士業との強固な連携により、貴社が直面する困難な紛争に対し、法務・実務の両面から、粘り強く、そして最適な解決への道筋をご提案いたします。

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