令和7年6月の行政書士法改正(令和8年1月施行)において、第1条の2第2項に「デジタル技術の活用による業務の改善向上」という努力義務規定が盛り込まれました。
まさに行政書士制度の歴史的な転換点であり、非常に重要な意味を持っています。
他の士業(特に司法に関わる弁護士など)に先駆けて、行政書士法にこのような明確な「デジタル条項」が入った背景には、「行政書士こそが、国のデジタル戦略(行政DX)の最重要パートナーである」という国側の強い期待と要請があります。
1 行政と司法のデジタル化スピードの違い
〇 行政(行政書士の領域):
政府は「デジタル庁」を司令塔として、行政手続きのオンライン化(100%デジタル化)を急ピッチで進めています。許認可申請のプロである行政書士がデジタルに対応できなければ、国のDX自体が停滞してしまいます。
〇 司法(弁護士の領域):
裁判手続きのIT化も進んでいますが、行政手続きに比べれば件数も少なく、対面や書面での議論が重視される性質上、デジタル化への移行プロセスは異なります。
つまり、「行政手続きのデジタル化」が国策の最優先事項であるため、その担い手である行政書士に対し、法律レベルでデジタル対応を求めたといえます。
2 デジタル・ディバイド(情報格差)の解消役としての期待
行政手続きが急速にオンライン化すると、高齢者やITに不慣れな事業者(建設業者や農家などを含む)が取り残されるリスクがあります。
国は、行政書士に対して単なる「代書(書類作成)」だけでなく、「国民とデジタル行政をつなぐ架け橋(インターフェース)」としての役割を期待しています。
「オンライン申請がわからないから代わりにやってほしい」「添付書類をデータ化して送信してほしい」。
こうしたニーズに応え、国民の権利利益を守るために、行政書士自身のデジタルスキル向上が必須条件とされたのです。
3 本人確認とセキュリティの担保
オンライン申請において最も懸念されるのが「なりすまし申請」や「虚偽申請」です。
行政書士は、以前から電子証明書(セコムパスポートなど)を用いた職責証明を行ってきました。
国としては、「国家資格者である行政書士がデジタル署名を付与して代理申請することで、真正性を担保したい」という狙いがあります。
法律にデジタル活用を明記することで、行政書士による代理申請の信頼性を高め、オンライン化を安全に進めようという意図があります。
4 まとめ
この規定は、「パソコンを使って仕事をしましょう」という事務レベルの話ではありません。
「これからの行政書士は、書類作成のプロであるだけでなく、デジタル行政手続きのコンサルタントでなければならない」という、職域の再定義(パラダイムシフト)を宣言したものです。
これは他の士業に先駆けた動きであり、行政書士にとっては「デジタル対応力」がそのまま「独占的な強み」になり得るチャンスでもあります。
この改正を機に、事務所の業務フロー自体をデジタル前提に組み替えることが、今後の競争力を左右することになりそうです。
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