外国人雇用、4つの在留資格と在留カード確認

「深刻な人手不足を解消するため、外国人材の雇用を考えているが、手続きが複雑で不安…」
「在留カードのどこを確認すれば、建設現場で働けるか分かるの?」
「うっかり不法就労をさせてしまった場合のリスクが怖い」
こんなお悩みはありませんか?

ご安心ください。
その不安は、外国人材を雇用する際の基本となる「在留資格」と「在留カード」のルールを正しく理解することで解消できます。

この記事では、建設業者が外国人材を雇用する際に、絶対に知っておくべき不法就労のリスクと、それを回避するための在留カード確認方法について、分かりやすく解説します。

深刻な担い手不足に直面する建設業界において、外国人材は、もはやなくてはならない貴重な戦力です。

しかし、その雇用にあたっては、建設業法だけでなく、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」が定めるルールを、厳格に遵守する必要があります。

もし、このルールを正しく理解しないまま雇用してしまうと、意図せず「不法就労」に加担したことになり、雇用した事業者も厳しい罰則の対象となる可能性があります。

今回は、企業の未来をリスクから守るため、外国人材を雇用する際の、最も基本的で重要な「在留資格の確認」について、その核心を詳しく見ていきましょう。

1知らなかったでは済まされない、「不法就労助長罪」の重いリスク

まず、なぜ在留資格の確認がこれほど重要なのか、その背景にある「不法就労」のリスクを理解することが第一歩です。

1-1. 不法就労となる3つのケース

不法就労とは、法律で認められていないにもかかわらず、外国人が日本で収入を得る活動を行うことです。主に以下の3つのパターンがあります。

① 不法滞在者が働くケース:
密入国した人や、ビザの期限が切れてオーバーステイになっている人が働く場合。
② 就労許可がないのに働くケース:
「短期滞在」などの観光目的で入国した人が、資格外活動の許可なく働く場合。
③ 許可された範囲を超えて働くケース:
「料理人」として在留資格を得た人が、建設現場で作業を行うなど、認められた活動内容とは異なる仕事をする場合。

1-2. 事業主に課せられる重い罰則

これらの不法就労をさせた事業主や、それを斡旋した者は、「不法就労助長罪」として、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

最も注意すべきは、この罰則は、「外国人であることを知らなかった」「在留カードの確認を怠った」といった過失の場合でも、処罰の対象となりうるという点です。
「知らなかった」では済まされない、非常に重い責任が事業主には課せられているのです。

2すべての基本、「在留カード」の確認方法

不法就労のリスクを回避するための絶対的な第一歩が、採用時に「在留カード」の原本を提示してもらい、その内容を正確に確認することです。

在留カードは、日本に中長期間、適法に滞在する外国人に交付される、いわば身分証明書です。

〇 確認ポイント:「就労制限の有無」欄

カードの表面中ほどにある「就労制限の有無」という欄が、最も重要な確認ポイントです。
ここに記載されている内容によって、対応が大きく異なります。

3「就労制限の有無」欄、4つのパターン別解説

この欄の記載内容は、主に4つのパターンに分かれます。

3-1. パターン①:「就労制限なし」

最もシンプルで、問題なく雇用できるケースです。
在留資格が「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」のいずれかである人が該当します。
これらの資格を持つ方は、日本人と同様に、活動内容に一切の制限なく、建設現場での作業を含め、どのような職種でも就労することが可能です。

3-2. パターン②:「在留資格に基づく就労活動のみ可」

建設分野で働くために、最も重要な在留資格が含まれるケースです。
この記載がある場合は、カード表面の「在留資格」の欄を必ず確認する必要があります。
その在留資格で認められた範囲の活動しかできません。
建設現場での作業を目的とする場合、在留資格は主に「特定技能」(建設分野)となります。
他の資格(例:「技術・人文知識・国際業務」など)では、原則として現場作業はできません。

3-3. パターン③:「指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可」

これは主に「技能実習」生が該当します。
彼らは、あらかじめ定められた技能実習計画に基づき、特定の「実習実施者(=雇用主)」との雇用関係のもとで、技能を習得するために働いています。
したがって、他の会社が、彼らをアルバイトなどで雇用することはできません。

3-4. パターン④:「就労不可」

在留資格が「文化活動」「短期滞在」「留学」「家族滞在」などの場合、この欄には「就労不可」と記載されています。
原則として、収入を得る活動はできません。
しかし、ここで諦めてはいけません。
次に、カードの裏面を確認する必要があります。

4「就労不可」でも働ける?

「就労不可」と記載されていても、例外的に働くことが許可されている場合があります。
それを確認するのが、在留カード裏面の下部にある「資格外活動許可欄」です。

〇 「許可:原則週28時間以内…」のスタンプ

このスタンプが押されている場合(主に留学生や家族滞在者)、週28時間以内という時間制限のもとで、アルバイトとして働くことが可能です。
建設現場での作業も、この時間内であれば問題ありません。

ただし、繁忙期に時間を超えて働かせたり、正社員として雇用したりすることはできませんので、厳格な時間管理が必要です。

5整理

深刻な人手不足に悩む建設業界にとって、意欲ある外国人材は、事業の未来を支える大切なパートナーです。

しかし、その雇用は、正しい法律知識と、厳格なコンプライアンス意識のもとで行われなければなりません。

採用時に在留カードの原本を丁寧に確認するという、ほんの数分の作業が、不法就労助長罪という重いリスクから会社を守り、外国人材が安心して日本で働き、技術を習得する環境を整えるための、最も重要な第一歩となるのです。

6まとめ

外国人材の雇用は、建設業界の担い手不足を解消する有効な手段ですが、その手続きは入管法に基づき、非常に厳格に行う必要があります。
「在留カード」の確認を一つ怠るだけで、事業主が重い罰則を受ける可能性もあります。

「この在留資格で、うちの現場で働けるのか?」「特定技能や技能実習の手続きが分からない」といったお悩みは、ぜひ専門家である行政書士にご相談ください。

当事務所は、建設業法務に加え、入国管理に関する手続きもサポートしております。
元岩手県職員としての経験と他士業との連携を活かし、貴社の適法な外国人雇用を、力強く支援いたします。

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