「医療法人を設立したいが、定款の作り方が分からない」
「基金制度って何?設定しないと損する?」
「行政手続きが複雑そうで不安だ」
こんな悩みはありませんか?
医療法人の定款は、一度決めると変更が非常に困難な「法人の憲法」です。
その悩みは今回の説明で解決できます。
今回の提案は、法人設立で失敗しないための定款作成の重要ポイントを、あなたのお困りごとを解決する内容として紹介します。
クリニックの永続的な運営や事業承継、節税対策として「医療法人の設立」を検討される先生方も多いかと存じます。
その設立手続きの第一歩であり、最も重要な核となるのが「定款(ていかん)」の作成です。
この定款作成を「単なる事務作業」と捉えて安易に進めてしまうと、将来的に取り返しのつかない事態を招く可能性があります。
今回は、医療法人の定款とは何か、そして作成時に絶対に見落としてはいけないポイントを分かりやすく解説します。
1 医療法人の「定款」とは?
まず、定款そのものの重要性についてご説明します。
1-1 法人の「憲法」と呼ばれる理由
医療法人の定款とは、まさにその法人の「憲法」とも呼べる最も重要なルールブックです。
法人の名称や目的、組織運営の根本規則(役員の選び方、会議の進め方など)を定めたもので、法人はこの定款に沿って活動しなければなりません。
この定款は、設立後は管轄の行政庁(都道府県)で保管され、原則として誰でも閲覧可能な状態となり、法人の透明性を担保するものとなります。
もし定款にない事業(例:訪問看護ステーションや介護事業)を急に始めたくても、まず定款変更の認可を得なければならず、事業開始までに数ヶ月単位の時間がかかってしまいます。
設立時に将来の展望まで見据えて作成することが不可欠です。
1-2 定款変更は「原則不可」と心得る
最も注意すべき点は、「定款の変更は非常に難しく、時間と手間がかかる」という事実です。
株式会社などと異なり、医療法人はその公益性の高さから、行政の強い監督下にあります。
例えば、定款の誤字脱字の修正や、法人の主たる事務所の移転(※管轄外の場合など)といった軽微に見える変更でさえ、社員総会での決議を経た上で、都道府県知事の「認可」や「届出」といった行政手続きが必要です。
この行政手続きを経なければ、たとえ社員全員が合意していたとしても、その変更は法的に一切無効です。
だからこそ、設立時にいかに精度の高い定款を作れるかが、将来の運営の自由度を大きく左右するのです。
2 定款に記載すべき3種類のルール
定款に記載する内容は、法律によって大きく3種類に分けられています。
2-1 絶対的記載事項(必須項目)
これは、医療法によって「必ず記載しなければならない」と定められた項目です。
一つでも欠けていると、定款自体が無効となり、法人の設立が認められません。
①目的
②名称
③開設する病院・診療所の名称と場所
④主たる事務所の所在地
⑤資産や会計に関する規定
⑥役員(理事・監事)に関する規定
⑦理事会に関する規定
⑧社員総会と社員の資格に関する規定
⑨解散に関する規定
⑩定款の変更に関する規定
⑪公告の方法
これらの項目は、設立認可申請の際に、行政庁(都道府県の担当課)によって一言一句厳しくチェックされます。
2-2 相対的記載事項(任意だが重要な項目)
これは、「定款に記載して初めて法的な効力を持つ」項目です。
記載しなくても定款自体は有効ですが、特定の制度を利用したい場合は、必ず記載が必要です。
〇代表例:
① 基金制度 (後ほど詳しく解説します)
② 基本財産
③ 役員の損害賠償責任の一部免除
④ 書面決議(理事会の議決があったとみなす定め)
特に「基金制度」は、設立時の資金調達と将来の返還に不可欠なため、記載しないケースは稀であり、事実上の必須項目と言えます。
2-3 記載しても無効となる項目(注意点)
平成19年(2007年)の医療法改正以降、新たに設立できる医療法人は「持分なし医療法人」のみとなりました。
これは、出資者(法律上の「社員」)に対して、株式会社のような剰余金の配当や、法人が解散した時の残余財産を分配する権利がないことを意味します。
もし定款に「社員に利益を分配する」「出資持分に応じて財産を分配する」といった趣旨の条項を設けても、その規定は法律上「無効」として扱われます。
3 設立で失敗しない!定款作成「3つの最重要ポイント」
ここからは、設立時に最も注意すべき、財産に直結する重要なポイントを3つご紹介します。
3-1 ポイント1:「基金制度」を設けないと全額「寄付」になる
これは、医療法人設立における最大の注意点であり、最もご相談が多い落とし穴です。
「基金」とは、法人の設立や運営のために拠出(出資)された資金のうち、拠出者(多くの場合は院長先生ご本人)に対して、将来的に法人が利益を出した際に「返還が予定されている」金銭等のことです。
もし、この「基金制度」を定款に定めずに設立資金を拠出(出資)してしまうと、その拠出されたお金や資産の全額が、法人への「寄付」として扱われてしまいます。
「寄付」は、文字通り法人に無償で譲渡したものですから、法的に返還を求めることは一切できません。
この「返還できない」という事実は、特に設立時に多額の自己資金や医療機器を投入する院長先生にとって、将来的なリタイアメントプランにも影響を与えかねない重大な落とし穴です。
実際に、「基金制度を設けずに設立してしまい、個人資産を失った」という深刻なケースも存在します。
特別な事情がない限り、基金制度は必ず定款に設けるべきです。
3-2 ポイント2:「基本財産」の設定は本当に必要か?
「基本財産」とは、法人の根本的な財産として定款に記載され、原則として処分(売却や担保提供)が厳しく制限される財産のことです。
「社会医療法人」といった特殊な法人格を目指す場合を除き、一般的な医療法人(診療所やクリニック)の設立において、この「基本財産」の設定は法律上の義務ではありません。
にもかかわらず、融資の関係などで安易に基本財産を設定してしまうと、将来的に経営の足かせになる可能性があります。
例えば、クリニックの土地や建物そのものを「基本財産」として設定した場合、その後の売却や、それを担保にした新たな銀行借り入れが、都道府県の許可なしには行えなくなります。
これにより、迅速な経営判断(例:設備の買い替え、移転)の妨げになる恐れがあります。
通例として、一般の医療法人では基本財産は設定しない方が、運営の自由度が高まるケースが多いです。
3-3 ポイント3:「公告の方法」はホームページが最適解
「公告」とは、決算書などの法人の重要な情報を外部に知らせる手続きです。
法律で義務付けられており、定款でその方法(どこに掲載するか)を定める必要があります。
以前は「官報(国が発行する新聞のようなもの)への掲載」が一般的でしたが、これには数万円単位の掲載費用と時間がかかります。
現在は、法改正により「日刊新聞紙への掲載」や「法人のホームページ(ウェブサイト)への掲載」も認められています。
費用面、迅速性、手軽さを考慮すると、第一の公告方法として「法人のホームページに掲載する」と定款で定めておくことが、現代のクリニック運営において最も現実的かつ有利な選択と言えるでしょう。
4 まとめ
医療法人の設立、特にその基盤となる「定款」の作成や、その後の行政機関への許認可申請は、専門知識がなければ「何から手をつけて良いか分からない」というのが実情ではないでしょうか。
定款の条文一つ一つが、将来の法人運営、財産、事業承継に直結します。
これらの複雑な手続きや法的な判断を、専門家である行政書士にトータルで任せることで、先生方や事務スタッフの皆様は「安心」を得ることができます。
日々の診療に集中しながら、法的に万全な体制で法人設立を進めることが可能です。
当事務所では、常に医療サイドに寄り添い、現状と将来の展望を丁寧にお伺いした上で、貴院にとって最善の解決策をご提案いたします。
さらに、当事務所の最大の強みは、他士業との強固な連携体制にあります。
弁護士、司法書士(登記)、税理士(税務)、社会保険労務士(労務)といった各分野の専門家と緊密に連携し、設立後の労務問題や税務、万が一の法的トラブルまで、あらゆる問題に対してワンストップで迅速に対応できる体制を整えています。
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まずはお気軽にご相談ください。
★注意事項
厚生労働省(地方厚生局)、都道府県、各保健所への医療法人に関する許認可申請や届出は、行政書士が、法律に基づき唯一、業として行政機関への申請代理を行うことが認められている国家資格者です。 行政書士以外の者(コンサルタント等を名乗る者を含む)が、他人の依頼を受けて報酬を得て、これらの申請書作成や代理提出を行うことは、行政書士法違反として法律で禁止されています。
5 お問い合わせ
行政書士藤井等事務所
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