
「建設業経理士って、経審で有利になるの?」
「合併した場合、経審の手続きはどうすればいい?」
「会社分割や事業譲渡の場合は?」
こんな疑問や不安はありませんか?
経営事項審査(経審)を申請するにあたって、建設業経理士の加点制度や、合併・会社分割・事業譲渡といった会社再編時の手続きについて、その概要を知っておくことは非常に重要です。
特に、合併時経審などの特例制度を知らないと、公共工事の入札に参加できない期間が生じてしまう可能性もあります。
ご安心ください!
今回の記事では、経営事項審査(経審)における建設業経理士の評価、登録経理講習、そして合併・会社分割・事業譲渡時の経審の取り扱いについて、詳しく解説します。
この記事を読めば、経審に関する疑問が解消され、スムーズな申請準備、そして会社再編時の適切な対応が可能になります。
岩手県、宮城県(仙台市含む)で公共工事の受注を目指す建設業者の皆様、ぜひ最後までお読みください。
今回の提案は、あなたのお困りごとを解決する内容として紹介します。
1経営事項審査(経審)と建設業経理士:加点評価の仕組み
経営事項審査(経審)では、建設業者の財務状況や経営能力を評価する項目の一つとして、「その他の審査項目(社会性等)W」があります。
この中の「建設業の経理の状況(W5)」において、建設業経理士の有資格者は加点評価されます。
1-1. 建設業経理士とは?
建設業経理士とは、一般財団法人建設業振興基金が実施する「建設業経理検定」に合格した人のことです。
建設業経理検定は、建設業経理に関する知識と処理能力の向上を目的とした資格試験で、1級と2級があります。
(1)1級建設業経理士:
財務諸表の作成・分析など、高度な建設業経理の知識とスキルを持つ者。
(2)2級建設業経理士:
仕訳、帳簿の記帳、決算処理など、基本的な建設業経理の知識とスキルを持つ者。
1-2. 経審での加点評価
1級または2級の建設業経理検定に合格すると、経審の「その他の審査項目(社会性等)W」の中の「建設業の経理の状況(W5)」において、「公認会計士等の数」の項目で加点評価されます。
具体的には、公認会計士や税理士などと同等の評価を受けることができます。
1-3. 加点評価のメリット
経審で加点されることは、公共工事の入札において有利になることを意味します。
特に、同規模の競合他社との比較において、わずかな点差が受注を左右する可能性があるため、建設業経理士の資格取得は、公共工事の受注機会を増やすための有効な手段となり得ます。
2建設業経理士の登録制度:継続的な学習の重要性
建設業経理士の資格は、一度取得すれば永続的に有効というわけではありません。
企業会計基準は頻繁に変化するため、建設業経理士には、継続的な学習が求められます。
2-1. 登録経理試験と登録経理講習
建設業経理士の資格を維持し、経審で加点評価を受けるためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
(1)1級または2級の登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年を経過していないこと
(2)1級または2級の登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年を経過していないこと
つまり、建設業経理検定に合格した日から5年を経過する日が属する年度の年度末までは、経審の評価対象となりますが、その後は、登録経理講習を受講し、修了することで、引き続き経審の評価対象となります。
2-2. 登録経理講習(建設業経理士CPD講習)
登録経理講習は、1級または2級の建設業経理士が、継続的に最新の会計知識を習得するための講習です。
現在は、一般財団法人建設業振興基金が「建設業経理士CPD講習」という名称で実施しています。
講習は、オンライン形式(eラーニング)で実施されており、全国どこからでも受講可能です。
講習内容は、建設業会計に関する最新のトピックスや法改正、実務上の留意点など、多岐にわたります。
2-3. 経過措置(令和5年3月まで)
令和3年4月施行の経審改正により、建設業経理士の登録制度が導入されましたが、令和5年3月までは経過措置が設けられていました。
この経過措置期間中は、登録経理試験の合格者(5年経過後も含む)は、登録経理講習を受講していなくても、経審の評価対象となっていました。
しかし、経過措置は終了しているため、現在は、上記の登録経理試験合格後5年以内、または登録経理講習修了後5年以内のいずれかの要件を満たす必要があります。
3合併・会社分割・事業譲渡時の経審
会社が合併したり、会社分割や事業譲渡を行ったりした場合(これらを総称して「会社再編」といいます)、通常の経審とは異なる手続きが必要となる場合があります。
これは、会社再編によって、会社の経営規模や財務状況、技術力などが大きく変化する可能性があるため、通常の経審の審査基準では、会社の実態を適切に評価できない場合があるからです。
そこで、建設業法では、会社再編時に、会社の実態に即した客観的事項の評価を可能にするための特例制度を設けています。
それが、「合併時経審」「会社分割時経審」「事業譲渡時経審」です。
これらの特例制度を利用することで、会社再編後、最初の決算日を待たずに、経審を受けることができます。
3-1. 合併時経審:吸収合併と新設合併
合併時経審とは、会社が合併した際に、合併後の実態に即した客観的事項の評価を可能にするために、合併後最初の決算日を待たずに、経審を受けることができる制度です。
この制度を利用することで、合併後の会社は、空白期間なく公共工事の入札に参加することができます。
合併には、以下の2つの種類があります。
(1)吸収合併:
既存の会社(存続会社)が、他の会社(消滅会社)を吸収する合併。消滅会社は解散し、その権利義務の全部を存続会社が承継します。
(2)新設合併:
新たに設立する会社(新設会社)が、既存の会社(消滅会社)を吸収する合併。
消滅会社は解散し、その権利義務の全部を新設会社が承継します。
合併時経審は、吸収合併であるか、新設合併であるかによって、審査基準日や各審査項目の審査方法に違いがあります。
3-1-1. 吸収合併の場合
吸収合併の場合、審査基準日は、合併期日となります。
つまり、合併の効力が発生した日が審査基準日となり、その日時点での会社の状況に基づいて経審が行われます。
ただし、存続会社が合併直前の決算日を審査基準日とする経審(合併直前経審)を受けている場合は、合併時経審を受けることは義務ではありません。
これは、合併直前経審の結果が、合併後の会社の状況をある程度反映していると考えられるためです。
しかし、合併によって会社の規模や財務状況などが大きく変化する場合は、合併時経審を受けることをおすすめします。
吸収合併の場合の、合併時経審の主な注意点は以下のとおりです。
(1)建設業許可の承継:
消滅会社が合併以前に受けていた建設業許可は、合併により当然に承継されるわけではありません。
存続会社が、建設業許可を承継するためには、別途、建設業法に基づく手続き(事業承継等の認可申請、または業種追加申請など)を行う必要があります。
(2)審査方法の細目:
合併時経審の審査方法の細目については、国土交通省の「建設業者の合併に係る建設業法上の事務取扱いの円滑化等について」に詳しく規定されています。主な審査項目と、その審査方法の概要は以下のとおりです。
(3)年間平均完成工事高及び年間平均元請完成工事高:
存続会社と消滅会社の完成工事高を合算して評価します。
(4)技術職員数:
存続会社と消滅会社の技術職員数を合算して評価します。
ただし、6ヶ月ルールの適用については、注意が必要です。
(5)自己資本額、利払前税引前償却前利益の額、経営状況及び研究開発の額:
存続会社と消滅会社の財務諸表を合算して評価します。
建設業の営業継続の状況: 存続会社の営業年数で評価します。
(6)法令順守の状況:
存続会社と消滅会社の法令遵守状況をそれぞれ評価します。
(7)監査の受審状況:
存続会社と消滅会社の監査の受審状況をそれぞれ評価します。
(8)その他の項目:
存続会社と消滅会社の状況をそれぞれ評価します。
〇提出書類:
合併時経審の申請には、通常の経審の申請書類に加えて、合併契約書の写し、合併後の会社の登記事項証明書、合併前の会社の決算書など、合併に関する書類が必要となります。
3-1-2. 新設合併の場合:詳細な手続きと注意点
新設合併の場合、審査基準日は、申請会社の設立の日、つまり合併登記の日となります。
新設会社は、合併により新たに設立される会社であるため、合併以前の経審結果は存在しません。
したがって、新設合併の場合は、合併時経審を受ける必要があります。
新設合併の場合の、合併時経審の主な注意点は以下のとおりです。
(1)建設業許可の取得:
消滅会社が合併以前に受けていた建設業許可は、合併により当然に承継されるわけではありません。
新設会社が、建設業許可を新たに取得する必要があります。
(2)審査方法の細目:
合併時経審の審査方法の細目については、国土交通省の「建設業者の合併に係る建設業法上の事務取扱いの円滑化等について」に詳しく規定されています。
主な審査項目と、その審査方法の概要は、吸収合併の場合とほぼ同様ですが、新設会社の自己資本額や利益額の算定方法など、一部異なる点があります。
〇提出書類:
合併時経審の申請には、通常の経審の申請書類に加えて、合併契約書の写し、新設会社の登記事項証明書、合併前の会社の決算書など、合併に関する書類が必要となります。
3-2. 会社分割時経審:吸収分割と新設分割
会社分割時経審とは、会社が会社分割を行った際に、分割後の実態に即した客観的事項の評価を可能にするために、分割後最初の決算日を待たずに、経審を受けることができる制度です。
会社分割には、以下の2つの種類があります。
(1)吸収分割:
既存の会社(承継会社)が、他の会社(分割会社)の事業の一部を承継する分割。
分割会社は存続し、承継会社に事業の一部が移転します。
(2)新設分割:
新たに設立する会社(新設会社)が、既存の会社(分割会社)の事業の一部を承継する分割。
分割会社は存続し、新設会社に事業の一部が移転します。
会社分割時経審は、吸収分割であるか、新設分割であるかによって、審査基準日や各審査項目の審査方法に違いがあります。
3-2-1. 吸収分割の場合
(1)審査基準日: 分割期日(分割の効力発生日)
(2)注意点:
承継会社が分割直前の決算日を審査基準日とする経審(分割直前経審)を受けている場合は、分割時経審を受けることは義務ではありません。
分割会社から承継する事業に係る建設業許可は、当然に承継されるわけではありません。承継会社が、建設業許可を承継するためには、別途、建設業法に基づく手続き(事業承継等の認可申請、または業種追加申請など)を行う必要があります。
審査方法の細目については、国土交通省の「建設業者の会社分割に係る建設業法上の事務取扱いの円滑化等について」に詳しく規定されています。
3-2-2. 新設分割の場合
(1)審査基準日: 新設会社の設立の日(分割登記の日)
(2)注意点:
新設会社は、分割により新たに設立される会社であるため、分割以前の経審結果は存在しません。
したがって、新設分割の場合は、分割時経審を受ける必要があります。
分割会社から承継する事業に係る建設業許可は、当然に承継されるわけではありません。新設会社が、建設業許可を新たに取得する必要があります。
審査方法の細目については、国土交通省の「建設業者の会社分割に係る建設業法上の事務取扱いの円滑化等について」に詳しく規定されています。
3-3. 事業譲渡時経審:譲渡会社と譲受会社
事業譲渡時経審とは、会社が事業譲渡を行った際に、譲渡後の実態に即した客観的事項の評価を可能にするために、譲渡後最初の決算日を待たずに、経審を受けることができる制度です。
事業譲渡の場合、譲渡会社と譲受会社のどちらが経審を受けるかによって、審査基準日や各審査項目の審査方法に違いがあります。
3-3-1. 譲渡会社が経審を受ける場合
(1)審査基準日: 事業譲渡期日
(2)注意点:
事業譲渡後も、譲渡会社が建設業許可を維持し、建設業を継続する場合に、経審を受けることができます。
譲渡した事業に係る完成工事高や技術職員数などは、審査対象から除外されます。
3-3-2. 譲受会社が経審を受ける場合
(1)審査基準日: 事業譲渡期日
(2)注意点:
譲受会社が、譲り受けた事業に係る建設業許可を承継するためには、別途、建設業法に基づく手続き(事業承継等の認可申請、または業種追加申請など)を行う必要があります。
審査方法の細目については、国土交通省の「建設業の譲渡に係る建設業法上の事務取扱いの円滑化等について」に詳しく規定されています。
3-4. 会社再編時の経審
合併、会社分割、事業譲渡のいずれの場合も、以下の点に注意が必要です。
(1)事前相談:
会社再編を行う場合は、事前に許可行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)に相談し、必要な手続きや提出書類について確認しておくことをおすすめします。
(2)提出書類:
通常の経審の申請書類に加えて、会社再編に関する書類(合併契約書、分割契約書、事業譲渡契約書、登記事項証明書など)が必要となります。
(3)審査期間:
通常の経審よりも審査に時間がかかる場合があります。
建設業許可の承継: 会社再編によって、建設業許可が当然に承継されるわけではありません。
別途、建設業法に基づく手続き(事業承継等の認可申請、または業種追加申請など)が必要となります。
4まとめ
経営事項審査(経審)は、公共工事の元請業者の立場となる者には、絶対に欠かせない重要な手続きです。
しかし、制度の煩雑さ・複雑さから、「難しそう…」「面倒…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
また、合併や会社分割、事業譲渡などの際には、さらに手続きが複雑になります。
行政書士藤井等事務所は、建設業許可・経営事項審査(経審)の専門家として、お客様の状況に合わせた最適なサポートを提供します。
法律の規定や申請手続きは複雑でなかなか分かりにくいものです。
ご自身で時間をかけて検討されるより、専門家に聞いた方が早くて確実です。
「経審について詳しく知りたい」「合併後の手続きが分からない」という相談だけでも構いません。
建設業許可及び経営事項審査(経審)を検討されている業者様は、お気軽に当事務所にご相談ください。
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