経営事項審査における技術者の条件

「経審の技術職員って、誰でもなれるの?」
「技術職員として認められるための条件は?」
「派遣社員やアルバイトは、技術職員になれないの?」
こんな疑問や不安はありませんか?

経営事項審査(経審)を申請するにあたって、「技術職員」の定義や要件を正しく理解しておくことは、非常に重要です。

なぜなら、技術職員の数や保有資格は、経審の評点(特に技術力(Z))に大きく影響し、公共工事の受注を左右する可能性があるからです。

ご安心ください!
今回の記事では、経営事項審査(経審)における「技術職員」について、その定義、該当する資格、雇用形態に関する注意点、さらには専任技術者や現場に配置する技術者との違いまで、徹底的に解説します。

この記事を読めば、自社の従業員が技術職員に該当するかどうかが明確になり、経審の申請準備をスムーズに進めることができます。

岩手県、宮城県(仙台市含む)で公共工事の受注を目指す建設業者の皆様、ぜひ最後までお読みください。

今回の提案は、あなたのお困りごとを解決する内容として紹介します。

1経営事項審査(経審)における技術職員とは?

経営事項審査(経審)で評価対象となる「技術職員」とは、一定の国家資格や実務経験などを持ち、かつ、特定の雇用条件を満たす従業員を指します。

具体的には、国土交通省の「経営事項審査の事務取扱いについて」の中で、以下の2つの要件を、「いずれも」満たす者、と定義されています。

(1)一定の国家資格、実務経験などを保有する者であること
(2)審査基準日(通常は決算日)以前に、6ヵ月を超える恒常的な雇用関係があり、かつ、雇用期間を特に限定することなく、常時雇用されている者であること

この2つの要件を、それぞれ詳しく見ていきましょう。

2技術職員に該当する資格・実務経験:5つの区分

技術職員として認められるためには、以下のいずれかの資格や実務経験を有している必要があります。

2-1. 区分1:国家資格者

(1)1級の国家資格者:
1級建築士、1級土木施工管理技士、1級電気工事施工管理技士など、建設業法で定められた1級の国家資格を有する者。

(2)2級の国家資格者:
2級建築士、2級土木施工管理技士、2級電気工事施工管理技士など、建設業法で定められた2級の国家資格を有する者。

(3)技術士:
技術士法に基づく技術士(建設部門、電気電子部門など、建設工事に関連する部門)の資格を有する者。

2-2. 区分2:技術士補

技術士補の資格を有し、かつ、技術士補登録をしている者。

2-3. 区分3:実務経験者

(1)大学卒業者:
建設工事に関する所定の学科(土木工学、建築学、電気工学など)を卒業し、3年以上の実務経験を有する者。

(2)高等学校卒業者:
建設工事に関する所定の学科を卒業し、5年以上の実務経験を有する者。

(3)上記以外の者:
10年以上の実務経験を有する者。

2-4. 区分4:技能検定合格者

(1)技能検定(1級または2級)に合格した者。
(2)単一等級の技能検定に合格した者。

2-5. 区分5:登録基幹技能者

建設業法施行規則第18条の3第2項第2号の規定に基づき、国土交通大臣が認定した登録基幹技能者講習を修了した者。

(注意点)
上記の資格や実務経験は、申請する建設工事の種類に対応している必要があります。
実務経験の年数は、卒業後の年数ではなく、建設工事に関する実務に携わった年数で計算します。

詳細な要件や、どの資格がどの建設工事の種類に対応するかについては、国土交通省や各都道府県のホームページ、または「経営事項審査申請の手引き」などで確認してください。

3技術職員の雇用に関する要件:「6ヵ月ルール」とは?

技術職員として認められるためには、資格や実務経験だけでなく、雇用に関する要件も満たす必要があります。

それが、「6ヵ月を超える恒常的な雇用関係」です。
これは、一般的に「6ヵ月ルール」と呼ばれています。

3-1. 「6ヵ月を超える恒常的な雇用関係」とは?

「6ヵ月を超える恒常的な雇用関係」とは、審査基準日(通常は決算日)の6か月以上前から、技術者と建設業者との間に雇用関係が存在していることを指します。

つまり、審査基準日の6か月前よりも前に雇用されていなければ、技術職員として認められません。

(具体例)
〇審査基準日が令和7年3月31日の場合:
 ・令和6年9月30日以前に入社した技術者 → 技術職員として認められる
 ・令和6年10月1日以降に入社した技術者 → 技術職員として認められない

3-2. 「雇用期間を特に限定することなく、常時雇用されている」とは?

「雇用期間を特に限定することなく、常時雇用されている」とは、技術者と建設業者との間に、期間の定めのない雇用契約(正社員など)が存在していることを指します。

したがって、以下のような雇用形態の従業員は、原則として技術職員として認められません。

(1)有期雇用契約の従業員(契約社員、アルバイトなど):
雇用期間に定めがあるため、原則として認められません。

(2)派遣社員:
派遣元との雇用関係であり、派遣先の建設業者との間に直接的な雇用関係がないため、認められません。
(例外)
継続雇用制度の適用者: 65歳以下の有期雇用契約の従業員であっても、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づく継続雇用制度(定年後も引き続き雇用する制度)の適用を受けている場合は、例外的に技術職員として認められます。

(3)在籍出向者:
出向契約に基づき、出向元との雇用関係を維持したまま、出向先の建設業者で勤務している場合は、出向元との雇用関係が明らかであれば、出向先の技術職員として認められることがあります。

4専任技術者、主任技術者・監理技術者との違い

建設業法には、「技術職員」の他にも、「専任技術者」や「主任技術者・監理技術者」といった用語が登場します。
これらは、それぞれ異なる役割と要件を持つため、混同しないように注意が必要です。

4-1. 専任技術者

(1)根拠法令: 建設業法(建設業許可の要件)

(2)役割: 営業所ごとに、許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関する一定の資格または経験を有する者を、専任の者として配置しなければなりません。

(3)要件:
技術職員と同様に、一定の資格または実務経験を有していること。
その営業所に常勤して、専らその職務に従事すること(=専任性)。
建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること。

(4)技術職員との違い:
専任技術者は、建設業許可の要件であり、営業所に常勤している必要があります。
技術職員は、経審の評価対象であり、必ずしも営業所に常勤している必要はありません(現場に配置されている技術者も含む)。

4-2. 主任技術者・監理技術者

(1)根拠法令: 建設業法(建設工事の現場に配置する技術者)

(2)役割:
 ①主任技術者:
建設工事の施工にあたり、施工計画の作成、工程管理、品質管理など、工事の施工に関する技術上の管理を行う者。
 ②監理技術者(現場専任):
・請負代金の総額が4,500万円(建築一式工事の場合は9,000万円)以上となる工事において、主任技術者の職務に加えて、下請負人を適切に指導・監督する者。
 (参考)建設業許可
    → 特定建設業は、下請発注金額は、5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上となる工事

(3)要件:
技術職員と同様に、一定の資格または実務経験を有していること。
建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること。
 *派遣社員や在籍出向者は原則不可。

(4)技術職員との違い:
主任技術者・監理技術者は、建設工事の現場に配置される技術者であり、技術職員の一部です。
主任技術者・監理技術者は、工事現場ごとに配置する必要があり、複数の工事現場を兼務することは原則としてできません。
 *一定の要件を満たす場合は兼務が可能な場合もあります。

5まとめ

経営事項審査(経審)における「技術職員」の定義、該当する資格、雇用形態に関する注意点、そして専任技術者や現場に配置する技術者との違いについて解説しました。

技術職員の数や保有資格は、経審の評点(特に技術力(Z))に大きく影響するため、これらの情報を正しく理解し、経審の申請準備を進めることが重要です。

行政書士藤井等事務所は、建設業許可・経営事項審査(経審)の専門家として、お客様の状況に合わせた最適なサポートを提供します。

法律の規定や申請手続きは複雑でなかなか分かりにくいものです。
ご自身で時間をかけて検討されるより、専門家に聞いた方が早くて確実です。

「自社の従業員が技術職員に該当するかどうか確認したい」「技術職員の要件について、もっと詳しく知りたい」という相談だけでも構いません。

建設業許可及び経営事項審査(経審)を検討されている業者様は、お気軽に当事務所にご相談ください。

6お問い合わせ

行政書士藤井等事務所
(1) お問い合わせフォーム
(2) 事務所ホームページ<許認可申請>