経審の結果通知書

「経営事項審査(経審)の結果通知書が届いたけど、見方がよく分からない…」
「同業他社の経審結果って、どこで見れるの?」
「経審の有効期間って、いつまで?」
こんな疑問や不安はありませんか?

経営事項審査(経審)を申請するにあたって、結果通知書の見方、審査項目の概要、そしてその活用方法を知っておくことは、非常に重要です。
経審の結果は、公共工事の受注だけでなく、自社の経営改善にも役立ちます。

ご安心ください!
今回の記事では、経営事項審査(経審)の結果通知書に焦点を当て、その見方、記載内容、活用方法、さらには同業他社の情報を入手する方法まで、詳しく解説します。

この記事を読めば、経審の結果通知書を最大限に活用し、自社の経営改善、そして公共工事受注へとつなげることができます。

岩手県、宮城県(仙台市含む)で公共工事の受注を目指す建設業者の皆様、ぜひ最後までお読みください。

今回の提案は、あなたのお困りごとを解決する内容として紹介します。

1経営事項審査(経審)の結果通知書(何が書かれている?)

経営事項審査(経審)の申請手続きを行うと、後日、審査結果が記載された「経営規模等評価結果通知書/総合評定値通知書」が、国土交通大臣許可の場合は国土交通大臣から、知事許可の場合は都道府県知事から、建設業者に送付されます。

この通知書は、1枚の書類で、「経営規模等評価結果通知書」と「総合評定値通知書」の2つの役割を兼ねています。

1-1. 1枚で2役!結果通知書の構成

経審の結果通知書は、正式名称を「経営規模等評価結果通知書/総合評定値通知書」といい、以下の2つの情報が記載されています。

(1)経営規模等評価結果:
経営規模(X)、技術力(Z)、その他の審査項目(社会性等)(W)の各評価項目についての評点

(2)総合評定値:
上記の各評価項目の評点と経営状況分析(Y)の結果を総合的に評価した評点(P点)

1-2. 通知書の見本と記載事項

経審の結果通知書には、以下の事項が記載されています。

(1)通知書のタイトル: 「経営規模等評価結果通知書/総合評定値通知書」
(2)申請者の情報: 建設業許可番号、商号または名称、代表者氏名、所在地
(3)審査基準日: 決算日(通常は、直前の決算日)
(4)許可業種: 建設業許可を受けている業種
(5)経営規模等評価の結果:
  -工事種類別年間平均完成工事高(X1)の評点と金額
  -自己資本額及び平均利益額(X2)の評点と金額
  -技術力(Z)の評点、元請完成工事高、技術職員数
  -その他の審査項目(社会性等)(W)の評点と各項目の内訳
(6)経営状況分析の結果(Y): 経営状況分析の評点(Y点)
(7)総合評定値(P): 各評価項目の評点を総合的に評価した評点(P点)
(8)有効期間: 審査基準日(決算日)から1年7か月
(9)その他: 特記事項など

通知書の見本は、各都道府県のホームページなどで公開されていますので、参考にしてください。

(例:岩手県「経営事項審査申請の手引き」
https://www.pref.iwate.jp/_res/projects/default_project/page/001/010/867/keishintebiki202309-2.pdf

2経審の結果通知書から得られる情報

経審の結果通知書は、単に公共工事の入札参加資格の有無や格付けを確認するための書類ではありません。

結果通知書に記載されている情報を読み解くことで、自社の強みや弱み、改善点などを把握し、経営改善に役立てることができます。

2-1. 総合評定値(P点):公共工事入札の重要指標

まず最初に注目すべきは、経審の結果である「総合評定値(P点)」です。
公共工事の発注者は、競争入札に参加する建設業者の資格審査を行う際に、客観的事項の審査である経審の総合評定値(P点)と、発注者独自の評価(発注者別評価)を点数化し、建設業者を格付けします。

この格付けによって、入札に参加できる工事の規模(請負金額)が変わってくるため、P点は、公共工事の受注を左右する非常に重要な指標となります。

P点は、許可業種ごとに算出されます。
例えば、「建築一式工事」と「電気工事」の2つの業種で経審を受けた場合、それぞれの業種でP点が算出されます。

自社がどの業種で、どのくらいの規模の公共工事を受注できる可能性があるのかを、P点から把握することができます。

2-2. 経営規模(X1、X2):売上と財務の状況を把握

(1)工事種類別年間平均完成工事高(X1):
審査基準日の直前2年または3年の平均完成工事高が評価されます。
X1の評点が高いということは、単純に売上が大きいことを意味します。
結果通知書のX1評点の左隣には、「〇年平均」と記載されており、具体的な金額も確認できます。
X1は、総合評定値(P点)に占める割合が25%と最も大きく、経審の評点アップにおいて重要な項目です。

(2)自己資本額及び平均利益額(X2):
自己資本額評点と平均利益額評点を分けて見ることで、より詳細な分析が可能です。
自己資本額評点は、自己資本額(純資産合計)の絶対額が評価されます。自己資本額は、資本金と利益剰余金の合計額であり、会社の安定性を示す指標となります。
自己資本額評点が高いということは、利益を蓄積し、財務基盤が安定していることを意味します。
平均利益額評点は、「営業利益+減価償却費」の2年平均が評価されます。営業利益は、本業で稼いだ利益であり、平均利益額評点が高いということは、本業でしっかりと利益を生み出していることを意味します。
また、減価償却費が加味されるため、設備投資を積極的に行っている建設業者も有利になります。

2-3. 技術力(Z):技術者数と元請実績を確認

(1)技術職員数:
一定の国家資格保有者(1級・2級の施工管理技士、建築士、技術士など)や実務経験者の人数が評価対象となります。
Zの評点が高いということは、技術職員を多く雇用し、技術力の高い建設業者であることを意味します。
結果通知書のZ評点の左には、「技術職員数」が記載されており、具体的な人数を確認できます。

(2)元請完成工事高:
審査基準日の直前2年または3年の平均額が評価されます。
Zの評点における配分は、技術職員数が80%、元請完成工事高が20%であり、技術職員数が重視されています。
元請完成工事高が高いということは、元請として工事を受注し、完成させた実績が多いことを意味します。

2-4. 経営状況(Y):財務の健全性をチェック

建設業者の経営状況を、会計的な立場(決算書)から分析し、評価した結果です。
Yの評点が高いということは、経営が安定している建設業者であることを意味します。

会社の規模が同程度の建設業者の間では、経営規模等評価(X, Z, W)の各評点では差がつきにくいですが、Yの評点は、良い会社とそうでない会社の差が顕著に表れます。

同業他社との比較や、自社の経営改善のためには、Yの評点の分析が重要となります。

2-5. その他の審査項目(社会性等)(W):多角的な評価項目

建設業者が、社会的責任を果たしているかどうか、といった観点から評価される項目です。

社会保険加入の有無、法定外労働災害補償制度加入の有無、営業年数、法令遵守の状況、建設機械の保有台数など、審査項目が多岐にわたります。

Wに関しては、Wの評点のみで判断するのではなく、各審査項目の評点結果を確認することが重要です。

結果通知書のW評点の上に、Wの各審査項目の評価結果(○、△、×など)が記載されています。

2-6. 各項目の平均点:700点を目安に

経審の各評価項目(X1, X2, Y, Z, W)の評点は、制度設計時点で700点が平均になるように設計されています。

したがって、自社の評点が700点を超えている項目は、全国平均よりも優れていると判断できます。

一方、700点を下回っている項目は、改善の余地があると考えられます。

3経審の結果通知書の活用方法:企業分析と経営改善

経審の結果通知書は、公共工事の入札参加資格を得るためだけでなく、自社の経営状況を客観的に把握し、経営改善に役立てるための貴重な情報源となります。

3-1. 自社の強み・弱みを把握する

経審の結果通知書に記載されている各評価項目の評点を見ることで、自社の強みと弱みを客観的に把握することができます。

例えば、
・技術力(Z)の評点が高い場合は、技術職員の数や質が高いことが強みと言えます。
・経営規模(X1)の評点が低い場合は、完成工事高(売上高)が少ないことが課題と言えます。
・経営状況(Y)の評点が低い場合は、財務体質に改善の余地があると考えられます。

このように、各評価項目の評点を分析することで、自社の経営課題を明確にし、具体的な改善策を検討することができます。

3-2. 同業他社との比較分析:ベンチマーキング

経審の結果通知書は、実は、インターネット上で公開されており、誰でも無料で入手することができます。

この仕組みを利用して、同業他社の経審結果を入手し、自社の結果と比較することで、業界内での自社の立ち位置や、競合他社との比較分析を行うことができます。

例えば、
・同業他社と比べて、自社の技術力(Z)の評点は高いのか、低いのか。
・同業他社と比べて、自社の経営状況(Y)の評点はどうか。
・自社が目標とする企業の経審結果はどうなっているのか。

これらの情報を比較分析することで、自社の強み・弱みをより深く理解し、具体的な経営改善策を検討することができます。

これは、ベンチマーキングと呼ばれる経営手法であり、自社の経営改善に非常に有効です。

3-3. 経営改善計画の策定:具体的な目標設定

経審の結果分析に基づき、具体的な経営改善計画を策定することができます。

例えば、
・技術力(Z)の評点が低い場合は、技術職員の採用や資格取得支援を強化する。
・経営規模(X1)の評点が低い場合は、営業力を強化し、受注拡大を目指す。
・経営状況(Y)の評点が低い場合は、財務体質を改善するための具体的な施策(コスト削減、売掛金回収の徹底など)を実行する。

このように、経審の結果を具体的な数値目標として設定し、経営改善に取り組むことで、より効果的な経営改善を実現することができます。

3-4. 金融機関へのアピール:融資審査に有利

経審の結果は、金融機関からの融資審査にも影響を与えることがあります。

特に、経営状況(Y)の評点は、企業の財務状況を客観的に示す指標であるため、金融機関は融資審査の際に重視します。

経審の結果が良好であれば、金融機関からの融資を受けやすくなったり、より有利な条件で融資を受けられたりする可能性があります。

また、経審の結果を積極的に開示することで、金融機関からの信頼を高めることにもつながります。

3-5. 建設業許可の更新・業種追加:スムーズな手続き

経審の結果通知書は、建設業許可の更新申請や業種追加申請の際にも、添付書類として提出を求められることがあります。

経審を毎年受けていれば、これらの手続きをスムーズに進めることができます。

4同業他社の経審結果を入手する方法:情報公開制度を活用

    経審の結果通知書は、実は、インターネット上で公開されており、誰でも無料で入手することができます。
    ここでは、同業他社の経審結果を入手する方法を解説します。

    4-1. 建設業情報管理センターのホームページ

    一般財団法人建設業情報管理センターのホームページでは、「経営事項審査結果の公表」というサービスを提供しています。

    このサービスを利用することで、経審を受けた建設業者の企業情報を検索し、結果通知書(経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書)を閲覧・ダウンロードすることができます。

     〇建設業情報管理センター 経営事項審査結果の公表: https://www.ciic.or.jp/

    4-2. 検索方法

    建設業情報管理センターのホームページでは、以下の方法で企業情報を検索できます。

    ・許可番号検索: 建設業許可番号から検索
    ・会社名検索: 会社名から検索
    ・所在地検索: 所在地(都道府県、市区町村)から検索

    検索結果一覧から、目的の企業を選択すると、その企業の経審結果(総合評定値、各評価項目の評点など)が表示されます。
    結果通知書は、PDF形式でダウンロードすることができます。

    4-3. その他の情報公開制度

    上記以外にも、各都道府県の建設業許可担当部署や、国土交通省の地方整備局などで、建設業者の情報を閲覧できる場合があります。
    詳細については、各機関にお問い合わせください。

    5まとめ

    経営事項審査(経審)の結果通知書は、公共工事の入札参加資格を得るためだけでなく、自社の経営状況を客観的に把握し、経営改善に役立てるための貴重な情報源です。

    また、同業他社の経審結果を入手し、自社と比較することで、業界内での自社の立ち位置や、競合他社との比較分析を行うことも可能です。

    今回の記事で解説した内容を参考に、経審の結果通知書を最大限に活用し、自社の経営改善、そして公共工事受注へとつなげてください。

    行政書士藤井等事務所は、建設業許可・経営事項審査(経審)の専門家として、お客様の状況に合わせた最適なサポートを提供します。

    法律の規定や申請手続きは複雑でなかなか分かりにくいものです。
    ご自身で時間をかけて検討されるより、専門家に聞いた方が早くて確実です。

    「経審の結果の見方が分からない」「同業他社と比較して、自社の課題を把握したい」という相談だけでも構いません。

    建設業許可及び経営事項審査(経審)を検討されている業者様は、お気軽に当事務所にご相談ください。

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