経営事項審査の「総合評定値P」とは?

「公共工事の入札に参加したいけど、経営事項審査(経審)って何?」
「経審の点数が低いと、公共工事を受注できないの?」
「令和5年に改正があったって聞いたけど、何が変わったの?」
こんな悩みはありませんか?

経営事項審査(経審)を申請するにあたって、具体的な審査事項、申請区分、有効期間などの概要を知っておくことは、公共工事の受注を目指す上で不可欠です。

経審は、公共工事の入札参加資格を得るための重要なステップであり、その結果は、会社の経営に大きな影響を与えます。

ご安心ください!
今回の記事では、経営事項審査(経審)の基礎知識から、申請の流れ、審査項目、評点アップのポイント、そして最新の改正情報まで、徹底的に解説します。

この記事を読めば、経営事項審査(経審)に関する疑問が解消され、公共工事入札への道筋が明確になります。

岩手県、宮城県(仙台市含む)で公共工事の受注を目指す建設業者の皆様、ぜひ最後までお読みください。
今回の提案は、あなたのお困りごとを解決する内容として紹介します。

1経営事項審査(経審)とは?(公共工事受注の第一歩)

経営事項審査(経審)とは、国や地方公共団体、およびこれらに準ずる機関が発注する公共工事を、直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査のことです。

この審査は、建設業者の経営状況、経営規模、技術力、社会性などを客観的に評価し、公共工事を、適正に履行できる能力があるかどうかを判断することを目的としています。

1-1. なぜ経審が必要なの?

公共工事は、国民の税金を使って行われるため、以下のような点が求められます。

(1)工事の品質確保:
国民の生活や安全に直結するインフラを整備するため、高い品質の工事が求められます。

(2)適正な価格での工事:
税金の無駄遣いを防ぐため、適正な価格で工事が行われる必要があります。

(3)確実な工事の完成:
工事が途中で中断されることなく、確実に完成させることが求められます。

しかし、建設業者の経営状況や技術力は、外見からは判断することが困難です。

そこで、経営事項審査(経審)によって、建設業者の経営状況や技術力などを客観的な数値(評点)で評価し、一定の基準を満たした業者だけが公共工事の入札に参加できるようにすることで、上記のリスクを回避し、公共工事の適正な履行を確保しているのです。

1-2. 経審を受けられるのは建設業「許可」業者だけ

経営事項審査(経審)を受けるためには、まず、建設業許可を取得している必要があります。

建設業許可は、建設業を営む上で、最低限の要件(経営体制、技術力、財産的基礎など)を満たしていることを証明するものであり、経審は、その許可業者の中でも、さらに公共工事を請け負うにふさわしいかどうかを審査するものです。

いわば、建設業許可は「免許」であり、経審は「資格試験」のようなものと考えると分かりやすいでしょう。

1-3. 経審は元請業者のみが対象

経営事項審査(経審)は、公共工事の発注者から直接工事を請け負う建設業者、つまり「元請業者」となる建設業者が受けなければならない審査です。

下請業者として公共工事に参加する場合は、経審を受ける必要はありません。

ただし、下請業者であっても、将来的に元請業者として公共工事を受注したいと考えている場合は、経審の仕組みや評価項目を理解しておくことは非常に重要です。

経審の評価項目は、企業の経営改善の指針にもなり得るため、早めに準備を進めておくことで、将来的な公共工事受注の可能性を高めることができます。

1-4. 経審の根拠法令

経営事項審査(経審)は、建設業法第27条の23に規定されています。
この条文には、経審の目的、審査事項、審査基準、審査の申請手続き、審査結果の通知などが定められています。

1-5. 審査するのは誰?大臣 or 知事

経営事項審査(経審)は、建設業許可を出している行政庁が実施します。

具体的には、以下のようになります。
 ①大臣許可業者: 国土交通大臣(実際には、地方整備局などが審査を行います)
 ②知事許可業者: 都道府県知事(岩手県知事、宮城県知事など)

2経営事項審査(経審)の4つの審査項目:総合評定値(P点)

経営事項審査では、建設業者の企業力を、「経営規模」「経営状況」「技術力」「その他の審査項目(社会性等)」の4つの項目で評価し、最終的に「総合評定値(P点)」を算出します。

このP点は、公共工事の入札参加資格審査において、業者選定の重要な指標となり、P点が高いほど、大規模な公共工事を受注できる可能性が高まります。

2-1. 経営規模(X)

経営規模(X)は、会社の規模を測る指標であり、以下の2つの指標で評価されます。

(1)工事種類別年間平均完成工事高(X1):
過去2年または3年の、工事種類別の年間平均完成工事高を評価します。完成工事高が大きいほど、評点が高くなります。
これは、企業の施工能力や実績を示す指標となります。

(2)評価対象となる工事:
建設業許可を受けている業種の工事が対象となります。

(3)完成工事高とは:
審査基準日(決算日)以前に完成した工事の請負代金のことです。
未成工事(工事が完成していない)の請負代金は含まれません。

(4)自己資本額及び平均利益額(X2):
審査対象事業年度の自己資本額(純資産合計)と、過去2年の平均利益額(営業利益+減価償却実施額)を評価します。
自己資本額と平均利益額が大きいほど、評点が高くなります。これは、企業の財務状況や収益性を示す指標となります。

(5)自己資本額: 貸借対照表の「純資産合計」の額です。

(6)平均利益額: 営業利益に減価償却実施額を加えた額の2年平均です。

2-2. 技術力(Z)

技術力(Z)は、企業が保有する技術者の質と量、そしてその実績を評価する指標です。以下の指標で評価されます。

(1)工事種類別技術職員数:
許可を受けた工事の種類ごとに、一定の資格(1級または2級の国家資格、技術士など)を持つ技術職員の数を評価します。
技術職員の数が多いほど、評点が高くなります。これは、企業の技術的な基盤を示す指標となります。

(2)技術職員とは:
建設業法に定められた国家資格等を有する者、または一定の学歴・実務経験を有する者です。

(3)技術職員の資格:
1級または2級の国家資格(建築士、施工管理技士など)、技術士、その他国土交通大臣が定める資格(登録基幹技能者など)が対象となります。

(4)工事種類別年間平均元請完成工事高:
技術職員が関与した工事のうち、元請として完成させた工事の年間平均完成工事高を評価します。(令和5年1月の改正により、加点評価の対象となりました。)
これは、企業の技術的な実績を示す指標となります。

(5)元請完成工事高とは:
元請として請け負い、審査基準日(決算日)以前に完成した工事の請負代金のことです。

2-3. その他の審査項目(社会性等)(W)

その他の審査項目(社会性等)(W)は、企業の社会的責任に関する取り組みを評価する指標です。以下の項目で評価されます。

(1)労働福祉の状況(W1):
労働保険(労災保険、雇用保険)への加入状況、退職金制度や法定外の労災保険の導入状況などを評価します。

(2)建設業の営業継続の状況(W2):
建設業の営業年数(創業からの年数)を評価します。

(3)防災活動への貢献の状況(W3):
地方公共団体等との防災協定の締結状況などを評価します。

(4)法令遵守の状況(W4):
建設業法、労働基準法、労働安全衛生法などの法令遵守状況を評価します。

(5)建設業の経理の状況(W5):
公認会計士や税理士などによる監査の受審状況を評価します。

(6)研究開発の状況(W6):
試験研究費の支出状況を評価します。

(7)建設機械の保有状況(W7):
特定の建設機械(ショベル系掘削機、トラクターショベル、ブルドーザーなど)の保有状況、及び、リース状況(1年7か月以上)などを評価します。

(8)国際標準化機構が定めた規格による登録の状況(W8):
ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)の認証取得状況を評価します。

(9)若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況(W9):
35歳未満の技術者および技能労働者の育成・確保状況を評価します。
(令和5年1月の改正により、評価対象が拡大されました。)

(10)知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況(W10):
技術職員や技能労働者のCPD(継続学習)単位の取得状況、技能検定の合格状況などを評価します。(令和5年1月の改正により、新設されました。)

これらの項目は、企業のコンプライアンス体制、労働環境、地域貢献、環境への配慮、技術力向上への取り組みなど、企業の社会的責任に関する幅広い側面を評価するものです。

2-4. 経営状況(Y)

経営状況(Y)は、企業の財務状況を分析し、企業の支払い能力や収益性などを評価する指標です。

この経営状況分析は、国土交通大臣が登録した「登録経営状況分析機関」に依頼する必要があります。

登録経営状況分析機関は、企業の決算書(財務諸表)に基づいて、以下の8つの指標を用いて分析を行い、評点(Y点)を算出します。

(1)純支払利息比率(X1):
支払利息から受取利息配当金を差し引いた純支払利息が、売上高に占める割合を示します。低いほど、評点が高くなります。

(2)負債回転期間(X2):
買入債務(支払手形、買掛金など)や未払金などの負債が、何カ月分の売上高に相当するかを示します。短いほど、評点が高くなります。

(3)総資本売上総利益率(X3):
売上総利益(粗利益)が、総資本に占める割合を示します。高いほど、評点が高くなります。

(4)自己資本対固定資産比率(X4):
固定資産(建物、機械など)が、自己資本でどの程度賄われているかを示します。高いほど、評点が高くなります。

(5)自己資本比率(X5):
総資本に占める自己資本の割合を示します。高いほど、評点が高くなります。

(6)営業キャッシュフロー(X6):
営業活動によって得られたキャッシュフロー(現金および現金同等物)の額を示します。金額が大きいほど、評点が高くなります。

(7)利益剰余金(X7):
過去の利益の蓄積額を示します。金額が大きいほど、評点が高くなります。

(8)収益性(もうかりやすさ)(X8):
総資本経常利益率と売上高経常利益率のことです。

これらの指標は、企業の収益性、安全性、効率性などを総合的に評価するものであり、企業の財務体質の強さを測る上で重要な指標となります。

2-5. 総合評定値(P点)の算出

上記の4つの審査項目(X1, X2, Y, Z, W)の評点を、以下の計算式に当てはめて、総合評定値(P点)を算出します。

 〇 総合評定値(P)=0.25 × (X1) + 0.15 × (X2) + 0.20 × (Y) + 0.25 × (Z) + 0.15 × (W)

この計算式から分かるように、各項目の重要度(ウェイト)は、
 ・経営規模(X1):25%
 ・経営規模(X2):15%
 ・経営状況(Y):20%
 ・技術力(Z):25%
 ・その他の審査項目(社会性等)(W):15%

となっています。

このウェイトは、各評価項目が総合評定値(P点)に与える影響の大きさを示しており、この割合に応じて、各項目の評点が総合評定値に反映されます。

3経営事項審査(経審)の流れ

経営事項審査は、以下の流れで進みます。

(1)決算変更届の提出:
建設業許可を受けている都道府県または国土交通省(大臣許可の場合)に、毎事業年度終了後4か月以内に、決算変更届(決算報告書)を提出します。

これは、建設業法で義務付けられている手続きであり、経審を受けるための前提条件となります。

(2)経営状況分析の申請:
登録経営状況分析機関に、経営状況分析を申請します。申請には、決算書(財務諸表)などの書類が必要となります。

(3)経営規模等評価申請・総合評定値請求:
建設業許可を受けている都道府県または国土交通省(大臣許可の場合)に、経営規模等評価申請と総合評定値の請求を行います。
申請には、経営状況分析結果通知書、工事経歴書、技術職員名簿などの書類が必要となります。

(4)審査:
提出された書類に基づいて、許可行政庁(都道府県または国土交通省)が審査を行います。
審査では、申請内容に虚偽がないか、各評価項目の基準を満たしているかなどが確認されます。

(5)結果通知:
審査結果(総合評定値通知書)が申請者に送付されます。
この通知書には、総合評定値(P点)、各評価項目の評点、有効期間などが記載されています。

4経営事項審査(経審)の申請区分

経営事項審査には、以下の3つの申請区分があります。

(1)新規申請:
初めて経営事項審査を受ける場合

(2)許可換え新規申請:
大臣許可から知事許可へ、あるいは、知事許可から大臣許可へ、許可換え後に初めて経営事項審査を受ける場合

(3)継続申請:
既に受けている経営事項審査の有効期間が切れる前に、再度受ける場合(有効期間は1年7か月)

申請区分によって、提出書類や審査の流れが若干異なる場合がありますので、注意が必要です。

5経営事項審査(経審)の有効期間

経営事項審査の結果(総合評定値)の有効期間は、審査基準日(決算日)から1年7か月です。

公共工事を継続的に受注するためには、毎年、決算後速やかに経営事項審査を受ける必要があります。

有効期間が切れてしまうと、公共工事の入札に参加できなくなるだけでなく、入札参加資格の格付けにも影響が出る可能性があるため、注意が必要です。

6令和5年1月改正

令和5年1月に、経営事項審査の審査基準が改正されました。
主な変更点は以下のとおりです。(再掲)

(1)「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況」の新設(W10):
技術者や技能者の継続的な学習(CPDなど)を評価する項目が新設されました。

(2)「若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況」の評価対象の見直し(W9):
評価対象が、35歳未満の技術者だけでなく、技能労働者にも拡大されました。

(3)「建設機械の保有状況」における評価対象の見直し(W7):
特定の建設機械(ショベル系掘削機など)の保有状況に加えて、アタッチメントの保有状況も評価対象に追加されました。

(4)技術職員数(Z)の評価方法の変更:
複数の資格を持つ技術者の評価方法が、より実態に即したものに見直されました。

(5)持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取組状況の評価(W1):
SDGsへの取り組みが評価されるようになりました。

これらの改正は、建設業界における技術力向上、若手人材の育成、労働環境の改善、SDGsへの貢献などを促進することを目的としています。

7まとめ

経営事項審査(経審)は、公共工事の元請業者の立場となるには、絶対に欠かせない重要な手続きです。

しかし、制度の煩雑さ・複雑さから、「難しそう…」「面倒…」と感じている方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、経営事項審査(経審)の基本的な仕組み、審査項目、申請の流れ、有効期間、そして最新の改正情報まで、詳しく解説しました。

これらの情報を参考に、ぜひ、経審の準備を進めてください。

行政書士藤井等事務所は、建設業許可・経営事項審査(経審)の専門家として、お客様の状況に合わせた最適なサポートを提供します。

法律の規定や申請手続きは複雑でなかなか分かりにくいものです。
ご自身で時間をかけて検討されるより、専門家に聞いた方が早くて確実です。

「許可が取れそうかどうかだけでも知りたい」「どの登録経営状況分析機関を選べばいいか分からない」という相談だけでも構いません。

建設業許可及び経営事項審査(経審)を検討されている業者様は、お気軽に当事務所にご相談ください。

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