
「工事の途中で、現場の主任技術者が急に退職することに…後任と交代させても大丈夫だろうか?」
「プロジェクトの規模が拡大し、主任技術者から監理技術者への変更が必要になったが、どうすれば?」
こんな予期せぬ事態に、頭を悩ませていませんか?
ご安心ください。
その疑問は、建設業法が定める「技術者の途中交代」のルールを正しく理解することで、解決への道筋が見えてきます。
この記事では、原則として慎重に扱うべき現場技術者の途中交代について、例外的に認められるケースと、その際に遵守すべき手続きを分かりやすく解説します。
建設工事の品質と安全を確保し、一貫した責任体制のもとでプロジェクトを完成に導くため、工事現場に配置された主任技術者・監理技術者は、原則として、その工事の開始から完成まで、同一の人物が担当することが求められます。
しかし、長期にわたる工事では、病気や退職といった、やむを得ない事情で、技術者の交代が必要となる場面も起こり得ます。
このような場合に、法律のルールを知らずに安易な交代を行ってしまうと、発注者とのトラブルや、建設業法違反に問われるリスクさえ生じます。
今回は、この「技術者の途中交代」というデリケートな問題について、その正しい進め方を詳しく見ていきましょう。
1技術者の途中交代は、なぜ慎重に扱うべきなのか?
建設業法は、技術者の途中交代を安易に認めていません。
その理由は、「建設工事の適正な施工の確保を阻害するおそれ」があるからです。
一人の技術者が、プロジェクトの最初から最後まで責任を持つことで、
①工事内容や現場状況の継続的な把握
②発注者や下請負人との一貫したコミュニケーション
③問題発生時の迅速かつ的確な対応
が可能となります。
途中交代は、これらの継続性を断ち切ってしまうリスクがあるため、あくまで「やむを得ない場合の例外的な措置」であり、「必要最小限」に留めるべきである、というのが法律の基本的なスタンスです。
2例外的に「途中交代」が認められるケース
では、具体的にどのような場合に、技術者の途中交代が認められるのでしょうか。
国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」などでは、主に以下のような「やむを得ない事情」が例示されています。
2-1. 死亡、傷病、退職など、本人の都合によらない離脱
・ 死亡した場合
・ 病気や怪我により、長期の療養が必要となった場合
・ 結婚や出産、育児、介護といったライフステージの変化に伴う場合
・ 会社そのものを退職した場合
これらは、本人の意思だけではコントロールが難しい、客観的に見て交代が必要と認められるケースです。
2-2. 発注者の書面による承諾
上記のケース以外であっても、交代することについて、発注者(注文者)から書面による承諾が事前に得られている場合は、途中交代が可能です。
2-3. 公共工事における、より厳格なルール
公共工事においては、入札の公正性を確保する観点から、技術者の交代はさらに厳しく制限されます。
入札時に配置予定技術者として評価された技術者は、原則として交代できません。
交代が認められるのは、死亡や傷病といった、ごく限定的な理由に限られ、かつ、後任の技術者が、当初の技術者と同等以上の資格・経験を有していることが絶対条件となります。
3途中交代を行う際に、遵守すべき3つの重要ルール
やむを得ず技術者を交代させる場合、元請負人は、工事の継続性や品質確保に支障が生じないよう、万全の措置を講じる必要があります。
3-1. ルール①:交代時期は、工程の区切りを意識する
工事の進行に与える影響を最小限にするため、交代のタイミングは、できる限り工程上、キリの良い時点で行うべきです。
3-2. ルール②:後任者は、同等以上の能力を持つ者を選任する
後任の技術者は、前任者と同等以上の資格や工事経験を有していることが求められます。特に公共工事では、この点が厳しく審査されます。
3-3. ルール③:十分な引き継ぎ期間を設ける
最も重要なのが、引き継ぎです。
新旧の技術者が一定期間、共に現場に配置され、工事の進捗状況、課題、発注者や下請負人との協議内容などを、漏れなく引き継ぐための期間を設ける必要があります。
この引き継ぎが不十分だと、工事の品質に深刻な影響を及ぼしかねません。
4特殊なケース:主任技術者から監理技術者への交代
当初は主任技術者を配置していた工事が、大幅な設計変更などにより下請契約の総額が増加し、監理技術者の配置が必要となる基準(5,000万円または8,000万円以上)を超えてしまうことがあります。
この場合、特定建設業者である元請負人は、速やかに主任技術者から監理技術者へと交代させる義務が生じます。
このような事態を避けるためのプロの知恵として、契約当初から請負代金の大幅な増額が予想される工事については、たとえ当初の金額が基準未満であっても、あらかじめ監理技術者の資格を持つ技術者を、主任技術者として配置しておくというリスク管理が非常に有効です。
5整理
主任技術者・監理技術者の途中交代は、企業のコンプライアンスと、工事の品質を左右する重要な経営判断です。
「やむを得ない事情」が発生した場合でも、一方的に交代させることはできません。
必ず、発注者と十分に協議し、その承諾を得た上で、工事に支障が生じないよう、万全の引き継ぎ体制を整えること。
この誠実な対応こそが、発注者との信頼関係を維持し、企業のリスクを管理するための唯一の道と言えるでしょう。
6まとめ
建設工事の現場技術者の途中交代は、原則として認められておらず、その判断と手続きは非常に慎重に行う必要があります。
安易な交代は、発注者とのトラブルや、建設業法違反に問われるリスクを伴います。
「急な退職で、技術者を交代させたいが、手続きが分からない」「公共工事の技術者交代で、注意すべき点は何か」といったお悩みは、専門家である行政書士にご相談ください。
当事務所は、元岩手県職員としての経験と他士業との連携を活かし、最新の法令やマニュアルに基づき、貴社の状況に応じた最適な解決策をご提案します。まずはお気軽にお問い合わせください。
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