現場の標識、正しく掲示してる?

「工事現場に、どんな標識を掲示すれば良いのか、法律上のルールがよく分からない」
「建設業の許可票は、元請と下請、全ての会社が掲示する必要があるの?」
「施工体系図の掲示場所は、公共工事と民間工事で違うって本当?」
こんな疑問を感じていませんか?

ご安心ください。
その悩みは、建設業法や関連法令が定める「標識の掲示義務」を正しく理解することで解決できます。

この記事では、建設工事の現場に掲示すべき代表的な標識の種類と、その掲示に関する重要なルール、そして近年の法改正による緩和措置までを分かりやすく解説します。

建設工事の現場の入口や周辺に掲げられている、様々な標識。
これらは、単なる慣習や形式で行われているわけではありません。

それぞれの標識には、工事の透明性を確保し、公衆や現場作業員の安全を守り、そして自社が法令を遵守している健全な企業であることを社会に示すという、非常に重要な意味が込められています。

これらの掲示義務を正しく理解し、実践することは、建設業を営む上での基本的なコンプライアンスです。
今回は、すべての建設業者が知っておくべき、現場の標識に関するルールについて詳しく見ていきましょう。

1建設業法が定める2大掲示義務

まず、建設業法が直接的に掲示を義務付けている、最も重要な2つの標識について解説します。

1-1. ①施工体系図

施工体系図とは、その工事に関わる元請負人から一次、二次、三次…と連なる全ての下請負人の関係性(施工分担関係)を、一目で分かるように図で示したものです。

⑴掲示が義務付けられる工事:
下請契約の総額が一定基準を超えるなど、施工体制台帳の作成が義務付けられている工事において、元請負人が作成・掲示しなければなりません。

⑵掲示場所のルール:
① 公共工事の場合:
「工事関係者が見やすい場所」と「公衆が見やすい場所」の両方に掲示する必要があります。
② 民間工事の場合:
「工事関係者が見やすい場所」に掲示すれば足ります。
③ 更新義務:
工事の途中で下請負人が追加・変更になった場合は、速やかに施工体系図を修正・更新しなければなりません。

1-2. ②建設業の許可票


建設業の許可票は、自社が正規の建設業許可業者であることを公衆に示すための、いわば「身分証明書」です。
商号、許可番号、許可年月日、許可を受けた建設業の種類などを記載し、公衆の見やすい場所に掲示することが義務付けられています。

1-3. 【重要】法改正による許可票の掲示義務の緩和

ここで、非常に重要な法改正のポイントがあります。
2020年(令和2年)10月の建設業法改正以前は、元請負人だけでなく、その現場に入る全ての下請負人も、それぞれ自社の許可票を掲示する義務がありました。
大規模な現場では、無数の許可票が所狭しと並び、掲示スペースの確保が大きな課題となっていました。

しかし、法改正により、このルールは合理化され、現在では、建設業の許可票の掲示義務は、原則として「元請負人」のみとなりました。
これにより、下請負人の皆様の負担は大幅に軽減されています。

2建設業法以外の現場に必要な標識チェックリスト

工事現場に掲示すべき標識は、建設業法で定められたものだけではありません。
労働安全衛生法や建設リサイクル法など、他の様々な法律によっても、各種標識の掲示が義務付けられています。

2-1. ①労災保険関係成立票

その現場が、労働者災害補償保険の適用事業であることを示す標識です。
労働保険の保険関係成立届を提出した後、速やかに掲示する必要があります。

2-2. ②建設業退職金共済制度の現場標識

建設業退職金共済(建退共)に加入している事業者が、その現場で働く労働者のために証紙を貼付する場合には、その旨を示すステッカーなどを掲示します。

2-3. ③解体工事業者登録票・石綿(アスベスト)に関する表示など

解体工事を行う場合は、建設リサイクル法に基づき、解体工事業者としての登録票を掲示する必要があります。
また、石綿(アスベスト)の除去作業を行う場合は、その作業中であることが分かるよう、専用の表示を設けることが労働安全衛生法で義務付けられています。

2-4. ④建築基準法による確認済の表示

建築確認が必要な建物の工事の場合、その敷地内の見やすい場所に、確認済証を受けた旨や、建築主、設計者、工事施工者などを記載した「確認表示板」を掲示する必要があります。

3整理

工事現場の標識は、企業のコンプライアンス意識を外部に示す「顔」とも言える存在です。
法律で定められた標識を、正しい場所に、正確な内容で掲示することは、発注者や地域住民、そして現場で働く作業員からの信頼を得るための、不可欠な第一歩です。

特に、建設業の許可票に関する緩和ルールなど、法改正によって変化する部分もあります。
常に最新の情報を把握し、自社の現場が適法な状態にあるか、この機会にぜひ一度、丁寧にご確認ください。

4まとめ

工事現場における各種標識の掲示は、建設業法をはじめとする様々な法律で定められた、建設業者の重要な義務です。
そのルールは多岐にわたり、一つでも掲示を怠ると、企業のコンプライアンス体制を問われかねません。

「自社のこの工事では、どの標識を掲示すれば良いのか」「法改正後の最新のルールがよく分からない」など、現場の掲示物に関するお悩みは、専門家である行政書士にご相談ください。

当事務所は、建設業法務の専門家として、最新の法令に基づき、貴社の現場が遵守すべき掲示義務について、的確なアドバイスを提供します。
元岩手県職員としての経験も活かし、貴社の健全な事業運営を力強く支援いたします。

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