作業員名簿の作成義務とは?

「現場に出入りする作業員の情報、きちんと管理できているだろうか…」
「『作業員名簿』の作成が義務化されたと聞いたが、具体的に何を書けばいいの?」
「下請の作業員の保険加入状況まで、元請が把握する必要があるのか?」
こんな疑問や不安を感じていませんか?

ご安心ください。
その悩みは、改正建設業法で定められた「作業員名簿」の役割と、正しい作成ルールを理解することで解決できます。

この記事では、すべての元請・下請事業者が知っておくべき作業員名簿の重要性と、その具体的な記載内容、そして効率的な作成方法までを分かりやすく解説します。

建設工事の現場は、多くの専門業者が協力し、日々多数の作業員が出入りする、複雑でダイナミックな空間です。
この現場の安全とコンプライアンスを確保するためには、「今、誰が、どのような資格を持って、どのような作業に従事しているのか」を正確に把握・管理することが不可欠です。

そのための最も基本的なツールが「作業員名簿」です。
そして、2020年(令和2年)10月の建設業法改正により、この作業員名簿の作成・整備は、これまで以上に重要な法的義務として位置づけられました。
今回は、安全な現場運営の礎となる、この作業員名簿について詳しく見ていきましょう。

1なぜ「作業員名簿」は、これほど重要なのか?

まず、作業員名簿が単なる「出入り業者リスト」ではない、その本質的な役割を理解することが重要です。

1-1. 安全衛生管理の根幹をなす書類

作業員名簿の最大の目的は、安全衛生管理です。万が一、現場で労働災害が発生してしまった場合、被災した作業員の身元や緊急連絡先、加入している保険などを迅速に確認するための、命綱とも言える情報源となります。
また、危険な作業に従事する作業員が、必要な資格や特別な安全衛生教育を受けているかを確認・管理する上でも不可欠です。

1-2. コンプライアンス遵守の証

近年、建設業界では、社会保険への適切な加入が強く求められています。
作業員名簿を通じて、現場で働く一人ひとりの保険加入状況を元請負人が把握・管理することは、業界全体のコンプライアンスを確保するための重要な責務となっています。

2作業員名簿は「施工体制台帳」の一部である

今回の法改正で最も重要なポイントは、この作業員名簿が、「施工体制台帳」の記載事項の一部として、明確に義務付けられた点です。

つまり、施工体制台帳の作成義務がある工事(公共工事全般、および、特定建設業者が元請となる大規模な民間工事)においては、実質的に、作業員名簿の作成も法律上の義務となったのです。

建設業法施行規則では、「建設工事に従事する者」に関する事項として、以下の6つのカテゴリーの情報を記載することが定められています。
これらを網羅した名簿を作成し、施工体制台帳の添付書類として整備する必要があります。

3作業員名簿に記載すべき「6つの必須項目」

では、具体的にどのような情報を記載すれば良いのでしょうか。

3-1. ①作業員の基本情報

氏名、生年月日、年齢を記載します。緊急連絡先も併記するのが一般的です。

3-2. ②職種

とび工、鉄筋工、塗装工、一人親方など、その作業員が現場で担当する専門的な役割を明確にします。

3-3. ③社会保険等の加入状況

健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、それぞれ加入しているか否か、加入している場合はその事業所名などを記載します。

3-4. ④退職金共済制度の加入状況

中小企業退職金共済法に規定される被共済者(建退共など)に該当するかどうかを記載します。

3-5. ⑤安全衛生に関する教育の受講状況

職長教育や、特定の危険有害業務(足場の組立て、玉掛け、有機溶剤作業など)に関する、特別な安全衛生教育の修了証の有無などを記載します。

3-6. ⑥保有資格

1級・2級施工管理技士、各種技能士、免許など、その作業員の技術力を証明する資格を記載します。

これらの情報を、元請負人は、二次、三次以下の下請負人も含め、現場で作業するすべての作業員について、各下請負人から提出を受けて、取りまとめる必要があります。

4効率的な作業員名簿の作成方法

これだけ詳細な情報を、多くの作業員について作成・管理するのは大変な作業です。
そこで、実務上は、以下のような標準的な書式やシステムが活用されています。

4-1. ①全国建設業協会の「全建統一様式」

多くの建設現場で標準的に利用されているのが、全国建設業協会が定める「全建統一様式」の作業員名簿です。
必要な記載事項が網羅されており、これを活用するのが最も一般的で確実な方法の一つです。

4-2. ②建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用

建設業界のDX化を推進する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」に登録している場合は、システム上から作業員名簿を簡単に出力することができます。
作業員の資格情報や保険加入状況が一元管理されているため、書類作成の手間を大幅に削減でき、非常に効率的です。

4-3. ③国土交通省の作成例

国土交通省のウェブサイトにも、作業員名簿の標準的な様式例が公開されています。
これを参考に、自社で使いやすいようにカスタマイズして運用することも可能です。

5整理

作業員名簿の適切な作成と管理は、元請負人、そして下請負人双方に課せられた、重要な法的義務です。
しかし、それは単なる義務を超えて、現場で働く一人ひとりの顔と名前、そしてそのスキルや健康状態を、会社が責任をもって把握するという、現場の「安全文化」を醸成するための、最も基本的な第一歩と言えます。

この名簿を日々、正確な状態に保ち、活用していくこと。それこそが、安全で、品質の高い、そしてコンプライアンスの行き届いた、信頼される工事現場を実現するための礎となるのです。

6まとめ

2020年の建設業法改正により、施工体制台帳の作成対象工事において、「作業員名簿」の整備が実質的に義務化されました。
これは、現場の安全管理とコンプライアンスを徹底するための重要なルールです。

「作業員名簿の正しい書き方が分からない」「下請から、どのような情報を、どのタイミングで集めれば良いのか」など、具体的な作成・運用でお悩みでしたら、ぜひ専門家である行政書士にご相談ください。

当事務所は、元岩手県職員としての経験と他士業との連携を活かし、最新の法令に基づいた、完璧な安全管理書類の作成をサポートします。
貴社の健全な事業運営を、法務面から力強く支援いたします。

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