経営状況分析Y点の徹底解説

「経審のY点って、具体的に何を評価しているの?」
「うちの会社の財務状況は、経審でどう見られるんだろう…」
「Y点を上げるためには、どの数字に注目して、何を改善すればいいのか分からない!」
こんなお悩みや疑問を抱えていらっしゃる建設業の経営者様、ご担当者様は多いのではないでしょうか。

ご安心ください。
そのお悩み、この記事を読めばスッキリ解決への道筋が見えてきます。

経営事項審査(経審)における重要な評価軸の一つである「経営状況分析(Y点)」。
その評価の仕組み、8つの構成指標それぞれの意味と計算方法、そして特に中小建設業の皆様がY点改善のために押さえるべき重要なポイントを具体的に解説します。

今回の提案は、建設業許可を取得されている皆様が、Y点の構造を深く理解し、それを健全な企業経営と経審評点アップに繋げるためのお困りごとを解決する内容としてご紹介します。

経営事項審査(経審)において、企業の総合的な評価を示す総合評定値(P点)を構成する重要な要素の一つが「経営状況分析(Y点)」です。

このY点は、企業の財務的な健全性や収益性、効率性などを客観的な数値で評価するものであり、その結果は金融機関からの信用力や、ひいては公共工事の受注機会にも影響を与えます。

今回は、このY点の全体像を把握し、具体的な改善策を考えるための基礎知識を深掘りしていきましょう。

1経営状況分析(Y点)の基本的な理解

まず、Y点が経審の中でどのような位置づけにあり、どのように評価されるのか、その概要を掴むことが大切です。

1-1. Y点とは?

経営状況分析(Y点)とは、文字通り、建設業者の「経営の状況」、すなわち財務内容の健全度を評価するものです。
これは、企業の貸借対照表や損益計算書といった決算書を基に、定められた複数の財務指標を算出し、それらを点数化することで行われます。

Y点は、経審の総合評定値(P点)を構成する5つの評価項目(X1:完成工事高、X2:自己資本額及び利益額、Y:経営状況、Z:技術力、W:その他審査項目(社会性等))のうちの一つであり、P点への影響度は20%(P = 0.20Y + 他の項目)と比較的高く、無視できない重要な評価軸です。

1-2. 分析の実施者

Y点の算出は、国や都道府県といった行政庁が直接行うわけではありません。
国土交通大臣の登録を受けた民間の「登録経営状況分析機関」が、建設業者からの申請に基づき分析・評価を行います。

代表的な分析機関としては、一般財団法人建設業情報管理センター(CIIC)やワイズ公共データシステム株式会社などがあり、2025年5月現在、全国に10社が存在します。

建設業者は、経審の本申請を行う前に、これらのいずれかの機関に事前に経営状況分析を依頼し、「経営状況分析結果通知書」を取得する必要があります。

この通知書に記載されたY点の評点が、経審の本申請でそのまま採用されます。

1-3.8つの評価指標

経営状況分析(Y点)は、以下の8つの財務指標から構成されています。
それぞれの指標が企業のどのような側面を評価しているのかを理解することが、Y点改善の第一歩となります。

  1. 純支払利息比率(X1)
  2. 負債回転期間(X2)
  3. 総資本売上総利益率(X3)
  4. 売上高経常利益率(X4)
  5. 自己資本対固定資産比率(X5)
  6. 自己資本比率(X6)
  7. 営業キャッシュフロー(X7)
  8. 利益剰余金(X8)
    (※上記カッコ内のX1~X8は、Y点を構成する各指標のウェイト付けのための記号であり、経審全体のX1点(完成工事高)やX2点(自己資本額及び利益額)とは異なりますのでご注意ください。)

2Y点を構成する8つの指標

ここでは、Y点を構成する8つの各指標について、その計算式と、どのような状態が良好と評価されるのか、そのポイントを見ていきましょう。

2-1. 純支払利息比率(X1)

① 計算式: (支払利息 - 受取利息配当金) ÷ 売上高 × 100 (%)
② 評価のポイント:
・この比率が低いほど評価が高くなります。
・企業の支払利息の負担度合いを示す指標であり、借入金への依存度や金利負担の重さを反映します。
・受取利息配当金は支払利息から控除されるため、効率的な資金運用も評価に影響します。
③ 改善の方向性:
無駄な借入金を削減する、より低金利の融資への借り換えを検討する、手元資金を有効活用して受取利息を増やす、などが考えられます。

2-2. 負債回転期間(X2)

① 計算式: (流動負債 + 固定負債) ÷ (売上高 ÷ 12) (ヶ月)
・ユーザー提示の計算式「(流動負債+固定負債)/売上高 ×100」は一般的な負債比率の形であり、Y点の指標としては「負債が月商の何か月分あるか」を示す「負債回転期間」が用いられます。
・ここでは一般的なY点の指標に合わせて調整しました。
② 評価のポイント:
この期間が短いほど評価が高くなります。企業が抱える負債総額を、月平均の売上高で返済するのに何か月かかるかを示す指標であり、企業の支払い能力や債務返済能力の健全性を測ります。
③ 改善の方向性:
買掛金や未払金などの支払サイトを適切に管理する、売上債権の回収を早めて運転資金を確保し借入依存度を下げる、などが考えられます。

2-3. 総資本売上総利益率(X3)


① 計算式: 売上総利益 ÷ 総資本(2期平均) × 100 (%)
② 評価のポイント:
・この比率が高いほど評価が高くなります。
・「粗利率」とも呼ばれ、企業が投下した総資本に対してどれだけ効率的に売上総利益(粗利益)を生み出しているかを示す指標です。
・企業の基本的な収益力を測ります。
③ 改善の方向性:
原価管理を徹底して売上原価を低減する、より利益率の高い工事案件を選別・受注する、付加価値の高いサービスを提供する、などが考えられます。

2-4. 売上高経常利益率(X4)

① 計算式: 経常利益 ÷ 売上高 × 100 (%)
② 評価のポイント:
・この比率が高いほど評価が高くなります。
・企業の経常的な活動から得られる利益(営業利益+営業外収益-営業外費用)が売上高に対してどれくらいの割合かを示す指標です。
・本業の収益力に加え、財務活動なども含めた総合的な収益力を測ります。
③ 改善の方向性:
売上総利益率の向上に加え、営業外損益(受取利息、支払利息、雑損失など)の管理を適切に行うことが重要です。

2-5. 自己資本対固定資産比率(X5)

① 計算式: 自己資本 ÷ 固定資産 × 100 (%)
② 評価のポイント:
・この比率が高いほど評価が高くなります。
・企業が保有する固定資産(土地、建物、機械など)が、どれだけ返済義務のない自己資本で賄われているかを示す指標です。
・固定資産投資の健全性や長期的な財務安定性を測ります。
・一般的に100%を超えていることが望ましいとされます。
③ 改善の方向性:
自己資本を充実させる(内部留保の増加、増資など)、遊休資産の売却や過大な設備投資を避ける、などが考えられます。

2-6. 自己資本比率(X6)

① 計算式: 自己資本 ÷ 総資本 × 100 (%)
② 評価のポイント:
・この比率が高いほど評価が高くなります。
・企業の総資本(資産合計)に占める自己資本の割合を示す、最も基本的な財務安全性の指標です。
・自己資本比率が高いほど、借入金への依存度が低く、経営の安定性が高いと評価されます。
③ 改善の方向性:
継続的に利益を計上し、内部留保を積み増すことが最も重要です。安易な借入に頼らず、健全な財務体質を維持することが求められます。

2-7. 営業キャッシュフロー(X7)(2期平均)

① 計算式: (当期営業キャッシュフロー + 前期営業キャッシュフロー) ÷ 2 ÷ 1億円
② 評価のポイント:
・この数値が大きいほど(プラスで絶対額が大きいほど)評価が高くなります。
・企業が本業の営業活動からどれだけの現金(キャッシュ)を生み出しているかを示す指標です。
・黒字倒産を防ぐためにも重要な、現金の創出力・支払い能力を測ります。
・2期平均で評価されるため、安定したキャッシュフロー創出が求められます。
③ 改善の方向性:
まずは黒字経営を継続すること。そして、売上債権の早期回収、仕入債務の支払サイトの適正化、棚卸資産の圧縮など、運転資金管理を徹底することが重要です。

2-8. 利益剰余金(X8)

① 計算式: 利益剰余金 ÷ 1億円
② 評価のポイント:
・この数値が大きいほど評価が高くなります。
・企業が創業以来積み上げてきた利益の内部留保額を示します。
・企業の成長性や財務的な蓄積度合いを測る指標であり、多いほど財務基盤が強固であると評価されます。
③ 改善の方向性:
毎期着実に利益を計上し、それを配当などで社外流出させることなく、内部留保として企業内に蓄積していくことが基本です。

3注目すべきY点改善の鍵

上記の8つの指標はどれも重要ですが、特に資本規模が比較的小さい中小建設業者(例えば年間完成工事高が10億円以下など)にとって、Y点の評点に影響を与えやすく、かつ日々の経営努力で改善に取り組みやすいと考えられる重要な指標がいくつかあります。

ユーザー様ご提示の本文にもありましたが、ここでは以下の4つの指標に焦点を当て、その重要性と対策のポイントを考えてみましょう。

3-1. 純支払利息比率の低減

中小企業にとって、借入金利の負担は経営を圧迫する要因となり得ます。
この比率を低く抑えることは、収益性の改善と財務の安定に直結します。
① なぜ重要か?:
・金利負担が少ないほど、利益が手元に残りやすくなり、再投資や内部留保に回せる資金が増えます。
・金融機関からの評価も高まりやすくなります。
② 対策のポイント:
・ 借入内容の見直し: 現在の借入金の金利水準が適正か定期的に確認し、必要であれば金融機関との金利交渉や、より有利な条件での借り換えを検討します。
・ 資金繰りの改善: 手元資金を潤沢に保ち、不要な短期借入を避けることで、支払利息を抑制します。
・ 補助金・助成金の活用: 設備投資などに際して、返済不要の補助金や助成金を活用できないか検討し、自己資金負担や借入依存度を低減します。

3-2. 負債回転期間の適正化

負債が月商の何か月分あるかを示すこの指標は、資金繰りの安定性と密接に関連します。期間が長すぎると、資金繰りが苦しいと見なされる可能性があります。
① なぜ重要か?:
支払い能力に余裕があることは、取引先からの信用や金融機関の評価に繋がります。
突発的な支出や売上減少にも対応しやすくなります。
② 対策のポイント:
・ 売上債権管理の徹底: 入金サイトの短縮交渉や、売掛金の回収遅延防止策を講じます。ファクタリングなどの活用も一つの手段です。
・ 仕入債務管理の適正化: 買掛金の支払サイトを不必要に短くせず、資金繰りに余裕を持たせます。ただし、取引先との良好な関係維持も重要です。
・ 在庫管理の最適化: 過剰な在庫は資金を寝かせることになるため、適正な在庫水準を維持します。

3-3. 総資本売上総利益率の向上

投下した資本に対して、どれだけ効率的に粗利益を上げられているか。
これは企業の基本的な収益力を示すため、非常に重要です。
① なぜ重要か?:
高い粗利率は、価格競争力やコスト管理能力が高いことを意味し、安定的な利益確保の基盤となります。
② 対策のポイント:
・ 原価管理の徹底: 材料費、労務費、外注費などの工事原価を詳細に把握し、無駄を削減します。実行予算管理の精度向上が鍵です。
・ 高付加価値工事へのシフト: 単なる価格競争から脱却し、技術力や専門性を活かせる、より利益率の高い工事分野への進出を検討します。
・ 見積もり精度の向上: 正確な積算に基づいた適正な見積もりを行い、不採算工事の受注を避けます。

3-4. 自己資本比率の向上

自己資本は返済不要の安定した資金であり、この比率が高いほど、経営の安全性が高いと評価されます。
金融機関からの融資審査においても重視される指標です。
① なぜ重要か?:
自己資本が厚い企業は、外部環境の変化に対する抵抗力が強く、倒産リスクが低いと見なされます。
また、新たな事業展開や設備投資の際の資金調達も有利に進めやすくなります。
② 対策のポイント:
・ 継続的な黒字経営と内部留保の積み増し: これが最も王道かつ重要な対策です。毎期着実に利益を計上し、それを内部に留保していくことで自己資本は増加します。
・ 増資の検討: 必要に応じて、株主からの増資も自己資本を増強する有効な手段です。
・ 遊休資産の売却益の活用: 使用していない土地や機械などを売却し、その利益を内部留保に回すことも考えられます。

これらの指標改善は、一朝一夕に達成できるものではありません。
日々の経営活動の中で常に意識し、計画的に取り組んでいくことが、Y点の向上、そして企業の持続的な成長へと繋がるのです。

4まとめ

経営事項審査(経審)における経営状況分析(Y点)は、貴社の財務的な実力を客観的に示す重要な指標です。

8つの構成指標を正しく理解し、特に中小建設業の皆様にとっては「純支払利息比率」「負債回転期間」「総資本売上総利益率」「自己資本比率」といった項目を意識した経営改善に取り組むことが、Y点向上、ひいては総合評定値(P点)アップへの近道となります。

しかし、これらの財務指標の分析や改善策の立案、そして経審申請手続きは、専門的な知識と時間を要するものです。

「自社の決算書から、どうやってこれらの数値を読み解けばいいのか?」「具体的な改善策は?」「そもそも経審の手続きが煩雑で…」といったお悩みは、どうぞお一人で抱え込まず、私たち専門家にご相談ください。

当事務所は、建設業許可や経営事項審査(経審)を専門とし、岩手県内を中心に全国の建設業者様をサポートしております。

Y点分析はもちろん、P点全体の向上戦略、そして日々の経営に役立つアドバイスまで、お客様の「無限の可能性」を最大限に引き出すお手伝いをいたします。

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