
「経審のY点の評価、もっと良くならないだろうか…」
「決算書の作り方一つで、純支払利息比率の評価が変わるって本当?」
「支払利息や受取配当金の処理、うちの会社は正しくできているのかな…」
こんなお悩みや疑問をお持ちの建設業の経営者様、経理ご担当者様はいらっしゃいませんか。
ご安心ください。
そのお悩み、この記事を読めば解決の糸口が見つかります。
経営事項審査(経審)における経営状況分析(Y点)の重要な評価指標の一つ、「純支払利息比率」。
この指標の意味と計算方法、そして評価を高めるための具体的な会計処理のポイントや経営上の注意点を、分かりやすく徹底解説します。
今回の提案は、建設業許可を取得されている皆様が、純支払利息比率への理解を深め、適切な会計処理と経営判断によってY点評価を改善し、企業価値向上に繋げるためのお困りごとを解決する内容としてご紹介します。
経営事項審査(経審)における経営状況分析(Y点)は、建設業者の財務的な健全性を評価する重要な指標群です。
その中でも「純支払利息比率」は、企業の財務コスト負担の度合いを示すものとして注目されます。
この比率を適切に管理し、評価を高めることは、Y点全体の向上、ひいては総合評定値(P点)のアップにも繋がり、公共工事受注において有利な立場を築くために不可欠です。
今回は、この純支払利息比率について、その基本的な考え方から評価を高めるための具体的な方法まで、詳しく解説していきます。
1純支払利息比率とは?
まず、純支払利息比率が経審のY点評価においてどのような意味を持つのか、基本的な事項を確認しましょう。
1-1. 経営状況分析(Y点)を構成する8つの指標の1つ
純支払利息比率は、経審のY点を構成する8つの財務指標(①純支払利息比率、②負債回転期間、③総資本売上総利益率、④売上高経常利益率、⑤自己資本対固定資産比率、⑥自己資本比率、⑦営業キャッシュフロー、⑧利益剰余金)のトップバッターとして挙げられる指標です。
この指標は、企業の売上高に対して、支払利息から受取利息配当金を差し引いた実質的な金融費用の負担がどれくらいあるかを示します。
数値が低いほど、金融費用による経営圧迫が少なく、財務的に健全であると評価されます。
1-2. 評価の方向性:低いほど高評価
純支払利息比率は、その数値が小さいほど良い評価(高い評点)を得られます。
つまり、企業経営においては、この比率をいかに低く抑えるかがポイントとなります。
1-3. 計算式とその意味
純支払利息比率は、以下の計算式で算出されます。
★純支払利息比率 = (支払利息 - 受取利息配当金) ÷ 売上高 × 100 (%)
⑴ 分子
企業が実質的に負担している年間の純粋な支払利息額を意味します。
支払利息から、預金利息や株式配当金などの受取利息配当金を差し引くことで、より実態に近い金融費用負担を把握します。
⑵ 分母
この計算式から分かるように、純支払利息比率を下げる(評価を上げる)ためには、分子である「(支払利息 - 受取利息配当金)」を小さくするか、分母である「売上高」を大きくする必要があります。
2評価アップの鍵 その1
決算書の表示方法一つで、純支払利息比率の評価が変わることがあります。
特に注意したいのが、「支払利息割引料」という勘定科目の扱いです。
2-1. 「支払利息割引料」に含まれる2つの要素
多くの企業では、銀行からの借入金利息である「支払利息」と、保有する受取手形を期日前に現金化する際に発生する「手形割引料」を、まとめて「支払利息割引料」という一つの勘定科目で処理しているケースが見受けられます。
しかし、経審の評価上、この二つは性質が異なると考えられています。
純支払利息比率の計算における「支払利息」には、本来、手形割引料は含まれません。
2-2. なぜ区分が必要か?
もし「支払利息割引料」の全額を純支払利息比率の計算式の「支払利息」に含めてしまうと、分子の金額が必要以上に大きくなり、結果として純支払利息比率が高く(悪く)なってしまいます。
手形割引料は、実質的には資金調達の一形態ではありますが、経審評価においては金融費用そのものとは見なされにくい側面があります。
したがって、これを支払利息から区分して処理することで、分子の金額を適正化し、Y点評価を不当に下げることを防ぐことができます。
2-3. 具体的な会計処理方法
手形割引料を支払利息と区分するための具体的な会計処理としては、以下のような方法が考えられます。
⑴ 「雑損失」として処理する:
手形割引料の金額が僅少である場合や、重要性が低い場合に用いられることがあります。
⑵ 「手形割引料」または「手形売却損」として独立した勘定科目を設ける:
より正確な会計処理としては、手形割引料を明確に区分できる勘定科目を別途設けて計上する方法が推奨されます。
これにより、財務諸表の透明性も高まります。
2-4. 税理士との連携の重要性
これらの会計処理は、企業の経理担当者だけでなく、顧問税理士との緊密な連携が不可欠です。
決算処理を行う前に、経審の評価を意識した勘定科目の設定や仕訳処理について、税理士に事前に相談し、適切な指導を受けることが望ましいでしょう。
具体的には、「支払利息と手形割引料を分けて計上してください」と明確に依頼することが重要です。
3評価アップの鍵その2
計算式の分子を小さくするもう一つのポイントは、「受取利息配当金」を漏れなく計上することです。
3-1. 受取利息配当金の具体例
受取利息配当金には、以下のようなものが該当します。
① 預貯金の受取利息
② 有価証券(国債、社債など)の受取利息
③ 株式の受取配当金
④ 信用金庫や信用組合からの剰余金の分配金
⑤ その他、金融資産から得られる収益
3-2. 「雑収入」処理の落とし穴
実務上、これらの受取利息配当金が、詳細な内訳を把握せずに「雑収入」として一括で処理されてしまっているケースが散見されます。
もし、雑収入の中に受取利息配当金に該当するものが含まれているにも関わらず、純支払利息比率の計算上、これがマイナス項目として考慮されない場合、分子の金額が本来よりも大きくなり、評価上不利になってしまいます。
3-3. 決算書チェックと適切な勘定科目への振替
したがって、決算時には雑収入の内訳を精査し、受取利息配当金に該当するものは、正しく「受取利息配当金」の勘定科目に振り替えるか、少なくともその内容を明確に区分して把握しておく必要があります。
これもまた、税理士と連携し、決算書の作成段階から注意を払うべきポイントです。
4評価アップの鍵その3
純支払利息比率の計算式の分母は「売上高」です。
したがって、売上高が大きいほど、比率は小さく(良く)なります。
4-1. 売上高と比率の関係性
単純な算数の話になりますが、同じ支払利息負担額であっても、それを稼ぎ出すための売上規模が大きければ大きいほど、相対的な利息負担率は軽いと評価されます。
4-2. 期末における売上計上の注意点
一部の企業では、期末の利益調整や税金対策として、意図的に売上計上を翌期に繰り延べたり、売上を低く見せようとしたりするケースがあるかもしれません。
しかし、経審の純支払利息比率の観点からは、これは逆効果になり得ます。
売上高を過少に計上すると、分母が小さくなるため、純支払利息比率が不必要に上昇し、Y点評価を下げる要因となります。
4-3. 適正な売上計上の重要性
もちろん、架空売上の計上や粉飾決算は論外ですが、発生主義の原則に基づき、当期に実現した売上は正確に、そして漏れなく計上することが、税務上の適正性だけでなく、経審評価の観点からも重要です。
「今期は利益が出過ぎたから税金がもったいない」という短絡的な考えで売上を操作することは、巡り巡って自社の評価を下げることにも繋がりかねないため、慎重な判断が求められます。
5純支払利息比率改善のための更なる経営努力
上記のような会計処理上のテクニックだけでなく、より本質的に純支払利息比率を改善するためには、以下のような経営努力も重要となります。
5-1. 借入金への依存度低減
⑴ 自己資本の充実:
利益を内部留保として積み上げ、自己資本を厚くすることで、借入金への依存度を下げ、支払利息を圧縮します。
⑵ 不要不急な借入の見直し:
事業計画や資金繰り計画を精査し、本当に必要な借入かどうかを厳しく判断します。
5-2. 金融機関との良好な関係構築と条件交渉
⑴ 金利交渉:
経営状況の改善などを材料に、取引金融機関に対して金利の引き下げ交渉を行うことも有効です。
⑵ 低金利融資への借り換え:
より有利な条件の融資制度(例えば、日本政策金融公庫の融資や地方自治体の制度融資など)をリサーチし、借り換えを検討します。
5-3. 効率的な資金運用
〇 余剰資金の有効活用:
手元に余剰資金がある場合は、安全性の高い金融商品で運用し、受取利息を増やすことも一案です。
ただし、本業への影響やリスク管理も考慮する必要があります。
純支払利息比率の改善は、一見地味な取り組みに見えるかもしれませんが、企業の財務体質強化と経審評価向上において、着実に成果を生む重要なステップです。
6まとめ
経営事項審査(経審)における経営状況分析(Y点)、その中でも「純支払利息比率」は、貴社の財務コスト管理能力を示すバロメーターです。
この比率を改善するためには、日々の会計処理における「支払利息と手形割引料の区分」「受取利息配当金の正しい計上」、そして「売上高の適正な計上」といった細やかな注意点が、評点アップの鍵を握っています。
これらのポイントは、決算書の数字一つひとつに意識を向けることで、見えてくる改善点です。
しかし、日々の業務に追われる中で、経審評価の細部にまで目を配るのは容易ではないかもしれません。
また、「うちの会社の決算書は大丈夫だろうか?」「税理士にどう伝えれば経審上有利な処理をしてもらえるのだろう?」といった疑問や不安も尽きないことでしょう。
当事務所は、岩手県北上市を拠点に、建設業許可や経営事項審査(経審)を専門とする行政書士事務所です。
私たちは、お客様の決算書を丁寧に分析し、純支払利息比率をはじめとするY点各指標の改善に向けた具体的なアドバイス、そして最適な会計処理に関するご提案を行います。
元県職員としての経験と、税理士を含む他士業との幅広いネットワークを活かし、貴社の「無限の可能性」を最大限に引き出すサポートをお約束します。まずはお気軽にご相談ください。
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